服薬指導に活かす医薬品情報

レクタブル注腸フォーム

Q

何のお薬?処方目的は?

A

本剤は「潰瘍性大腸炎(重症を除く)」を適応症とする、本邦初の注腸フォーム剤です。

潰瘍性大腸炎は、大腸に慢性的に炎症が生じ潰瘍ができる原因不明の疾患です。治療は内科治療が基本で、活動期には寛解導入療法を、寛解後は寛解維持療法を長期にわたって継続します。寛解導入療法では、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤(メサラジン)をはじめ、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤(アザチオプリン、タクロリムス等)等の様々な薬剤が用いられます。本剤は寛解導入療法に用いられる薬剤の1つで、粘膜の炎症を鎮め、痛みや下痢、血便等の症状を改善します。

Q

用法・用量は?

A

通常、成人には1回あたり1プッシュ(ブデソニドとして2mg)を、1日2回直腸内に噴射します。1缶で14回まで投与可能です。臨床試験において12週を超えた投与は実施されておらず、投与開始6週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないようにします。

Q

保管・使用上の注意点は?

A

本剤は高圧ガス(LPG)を使用した可燃性の製品のため、直射日光の当たる場所や火気等の近くは避け、室温で保管します。また、保管時の容器の状態(正立・横倒し)によって製剤の安定性試験で差が認められたため、より安定な正立状態で保管します。
使用上の注意点として、容器が冷えていると薬液の流動性が低下し薬剤が出にくくなる場合があるため、使用前に容器を手等で温めてから使用します。また、容器は立てた状態で保管しますが、使用時は必ず容器を逆さにして使用します。容器を逆さにしてポンプを押さないと、決められた量の薬液を注入することができません。使用方法の詳細は、患者用説明文書「レクタブル®2mg注腸フォーム14回を使用される患者さんへ」をご参照ください。薬剤に同封、もしくは製造販売元であるEAファーマ㈱、キッセイ薬品工業㈱のホームページから確認できます。

Q

作用機序は?

A

本剤の有効成分であるブデソニドは、副腎皮質ステロイド剤です。同一成分を含む薬剤として、ゼンタコート(適応症:軽症から中等症の活動期クローン病)、パルミコート(適応症:気管支喘息)があります。
ブデソニドはグルココルチコイド受容体への親和性が高く、局所において高い抗炎症活性を有する一方、肝臓での初回通過効果を受けやすいため全身作用が弱いという特徴があります。本剤は直接直腸に投与するため、初回通過効果を回避することができます。また、薬剤が吸収されても速やかに肝臓で代謝されるため、全身性の副作用が少なく安全性が高い製剤と考えられています。

Q

相互作用は?

A

機序は不明ですが、本剤を含む副腎皮質ステロイド剤(注射剤、経口剤、吸入剤、注腸剤、坐剤)と、男性の夜間頻尿治療薬であるミニリンメルト(一般名:デスモプレシン酢酸塩水和物)との併用で低ナトリウム血症が発現するおそれがあり、併用禁忌となっています。
なお、本剤は主にCYP3A4で代謝される薬剤です。本剤は局所で作用する薬剤であることから、全身性の副腎皮質ステロイド剤に比べて影響は少ないと考えられますが、CYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、エリスロマイシン等)やグレープフルーツジュースとは併用注意です。

同種・同効薬との違いについて
潰瘍性大腸炎治療に用いられる副腎皮質ステロイド外用剤として、以下の薬剤があります。
●リンデロン坐剤(一般名:ベタメタゾン)
直腸炎型の潰瘍性大腸炎に用いられる薬剤。

●プレドネマ注腸(一般名:プレドニゾロンリン酸エステルナトリウム)、ステロネマ注腸(一般名:ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム)
直腸・S状結腸の病変(ステロネマ注腸3mgは脾彎曲までの病変)に効果が期待できる。横になった状態で薬液を注入する等、投与方法が煩雑。

●レクタブル注腸フォーム(一般名:上述)
直腸・S状結腸の病変に効果が期待できる。フォーム剤の特性から腸管内における薬液の保持性が高く、立位での投与が可能。また、投与後に肛門から薬液が漏れにくく、患者の受容性が良好な製剤であると考えられる。

掲載日: 2021/08/12
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