薬局探訪
2018.03.06

みよの台薬局グループ 薬剤師インタビュー

みよの台薬局グループ 薬剤師インタビュー

みよの台薬局グループ 薬局事業本部 副本部長
薬剤師 加藤 健司さん

在宅医療は薬剤師が活躍する時代!

地域包括ケアシステムのなか、在宅医療に興味を持つ薬剤師が増えてきました。在宅医療において医師や看護師、ケアマネージャーなど多職種の連携に薬剤師は欠かせない存在です。これからの時代に在宅薬剤師は何を求められているのか。在宅医療分野においてトップクラスの実績を誇る、みよの台薬局グループの薬剤師 加藤健司氏にお伺いしました。


「私たちが薬を持って行こう!」在宅医療を先駆けた薬局グループの想い


なぜ在宅医療をやっていこうと思われたのですか?

みよの台薬局グループが在宅医療を始めた理由は、調剤薬局に来られない患者さまへ薬を届けてあげたい、という想いから始まりました。在宅医療を始めた当時は、今と違って高齢者よりも病気が悪化している方とか、身体的に異常があって病院に来られない患者さまが多い状況でした。ドクターがそのような患者さまの往診に行くものの、処方箋が出ても患者さまは薬局に行くことができません。そこで「患者さまが調剤薬局に来られないのであれば、私たちが持って行こう」と。在宅医療を始めるには人も場所も必要ですし、時間や設備投資もかかります。でも、「誰かがやってあげなければならないなら、うちがやろう」というのが、社長の考え方です。入社して19年経ちましたが、入社した当初からみよの台薬局グループが在宅を先駆けていました。

現在みよの台薬局グループではどのような体制で地域医療に取り組まれているのでしょうか。

クリニックと患者さま、または有料老人ホームと利用者さんを結び付ける手助け的な役割をしています。患者さまは病院やクリニックからの紹介が多いと言われますが、私たちからも患者さまとドクターを結びつけることによって地域医療の連携に関わっています。当グループでは21年間在宅医療に携わっている薬剤師もおり、有料老人ホームでの勉強会に呼ばれたりしています。

在宅医療の中で、多職種連携に薬剤師が求められる理由


在宅医療において多種職連携の部分で今後、薬剤師に求められる能力なんでしょう?

主にコミュニケーション能力が求められます。まず在宅医療には医療従事者と介護従事者がおり、薬剤師はその仲介役となります。医療従事者と介護従事者は、お互い相手の業界のことをあまり深く知りません。そのことで仕事上の支障が生じるケースもあります。そこで必要になるのが、薬剤師の存在。薬剤師は医療と介護、両方の業界のことが分かるため、間に入ってコミュニケーションの橋渡しをすることができます。

具体的にはどんなことですか?

患者さまは薬剤師にはより心を開きやすいです。患者さまはドクターを目の前にするとどうしても緊張してしまい、正確な情報を伝えられない事も多くあります。一方、薬剤師には「先生には内緒だけど、実は薬使えてないのだよね」といった本音を意外と話してくれますので、薬剤師がケアマネージャーやドクターにフィードバックすることができるのです。しかし、薬剤師自身がどの様に多職種連携を取ればいいのか分からないという課題もあります。薬剤師は主体的に動いて、多職種の中核を担うファシリテート能力(ドクターやケアマネ、介護従事者、患者さまなどの関係者の話を聞き出したり、相互に連携が取れるよう整えたりする)と、問題点を共有するプレゼンテーション能力が必要になります。

患者さんからもドクターからも信頼を得られる薬剤師とは

一歩踏み込んだ医療人経験


チーム医療の一員として薬剤師の役割は大きいと思いますが、ご経験の中で感じる"信頼できる薬剤師像"について教えてください。

自信がある人ですね。自分のやっている事に自信がある薬剤師は信頼されます。主にスペシャリスト業務と、対人能力に自信を持つことが必要です。スペシャリスト業務とは、主に薬理学や製剤学、薬物動態学の分野を指します。こうした薬剤師にしかできない仕事に自信を持つことが大切です。対人能力に関しては、自分のやっている仕事に自信を持ち「私に任せてください」と伝えられるようになることです。例えば癌の患者さまであれば、「痛みを感じないような薬の調剤を僕がするから、一緒に頑張ろうよ」という一言を伝えます。患者さまに対しても、ドクターに対しても、「自分はこう思う」「自分のことを信頼してほしい」といった仕事に対する自信を伝えられる薬剤師は信頼されます。しかし、対人能力を上げるには「伝える経験」が必要です。

信頼される薬剤師には何が必要でしょうか。

薬剤師の仕事は経験値が大事。どんなに勉強していても、ドクターにフィードバックする経験がなかったら一生できません。患者さまに接する回数が少なかったら、患者さまに伝えることもできない。在宅での多職種連携に興味があるのであれば、どんどん経験を積んでいってほしいです。経験している数が全て自信に繋がります。在宅薬剤師は患者さまに対して一歩踏み込みますから、外来と違って感謝されることが多いです。感謝されると、「自分がやってきた事は間違ってない」という自信が持てますよね。こうした自信の積み重ねで、「あの薬剤師がいればどうにかなる」と患者さまに信頼してもらえる薬剤師になっていきます。

ズバリ、在宅医療に向く薬剤師、向かない薬剤師ってありますか?

清潔でない人や愛想のない人、暗い人は向かないです。患者さまから見たら家に上げたくないなと感じると思います。あと人と付き合うのが好きな人でないと難しいですね。逆に在宅医療に向いている薬剤師は、明るい人です。元気が良くて人のことが心配できる人、自己犠牲の精神がある人も向いていますね。人の為に何かしてあげようという考え方が大切です。

バックオフィスも在宅医療を支える


在宅の薬剤師の社内サポートのお話を聞かせてください。

在宅医療に従事する場合、あまり自己犠牲の精神が強すぎても良くありません。患者さまに対する責任感が強くなりすぎてしまい、「私がなんとかしないといけない」と考えるようになってしまいます。仮に担当していた患者さまが亡くなってしまった時にも、精神的に追い込まれてしまうのです。そこで登場するのが、バックオフィスで働く薬剤師。精神的な負担がかかりすぎないように、担当する患者さまを変えるなどの対処を行うことで在宅薬剤師の負担をケアしていきます。このように店舗全員で仕事を分担したり、在宅薬剤師の悩みを聞くようなサポート体制を作るバックオフィス業務に携わる薬剤師の存在も店舗マネジメントには重要です。しかし、バックオフィスで働く薬剤師は在宅医療の経験者でなければなりません。在宅医療の仕事内容や大変さを理解していないと、在宅薬剤師の気持ちが分からず、サポートができないからです。みよの台薬局グループは在宅薬剤師の経験者が多いため、その点はしっかりケアしています。在宅未経験の方でも、先輩がしっかりサポートする体制があるので、安心してこの分野に飛び込んでほしいと思いますね。

これからMR経験のある薬剤師が在宅医療で活躍できる時代

薬剤師の新しい選択肢


薬剤師の中には病院薬剤師、保険薬剤師のほかにMRとして活躍している人もいますよね。

実のところ、MRは在宅薬剤師に向いていると思います。MRの仕事はドクターに薬の情報を提供するプレゼンテーション能力、また必要な情報を医療関係者にフィードバックしていくというファシリテート能力を必要とする部分では、在宅薬剤師と通ずるところがあります。あとMRは外回りには慣れていますよね。在宅医療は病院へ行くのではなく患者さまの自宅へ訪問するので、毎回が新しい発見ですし、医療人として大きなやりがいがあると思いますよ。

最後に薬剤師へアドバイスをお願いします。

薬剤師の皆さんには、ぜひ潮目を見てほしいと思います。薬剤師にやってしまいがちな間違いというのが、診療報酬改定がある時に「この点数がどうやったら何点取れるか」という、上下変動しか見ないことです。これをやってしまう薬剤師が多いと感じています。「生き残っていく為にはどうしたらいいのか」ということを逆算して考えた方がいいです。厚生労働省は潮目を出しています。それに合わせて調整していくにはどうすればいいのか。薬剤師の方々は特に、潮目を見ることを意識して頂きたいと思います。

ファルマラボ編集部

「業界ニュース」「薬剤師QUIZ」 「全国の薬局紹介」 「転職成功のノウハウ」「薬剤師あるあるマンガ」「管理栄養士監修レシピ」など多様な情報を発信することで、薬剤師・薬学生を応援しております。ぜひ、定期的にチェックして、情報収集にお役立てください。

記事掲載日: 2018/03/06

あわせて読まれている記事