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  • 公開日:2025.03.11

乳幼児服薬指導加算とは?算定要件やよくある疑問点を解説

乳幼児服薬指導加算とは?算定要件やよくある疑問点を解説

乳幼児服薬指導加算は、6歳未満の乳幼児の処方箋を受け付けた際に、要件を満たした服薬指導を行うことで算定可能です。しかし、算定基準に関して、例えば外用薬のみの処方箋での算定可否や、明確な服薬アドヒアランス上の問題が認められない症例での適用の是非など、疑問を抱く薬剤師も少なくありません。

本記事では、乳幼児服薬指導加算の算定要件を解説するとともに、具体的な服薬指導例や算定に関するよくある疑問点などをご紹介します。

乳幼児服薬指導加算の基本知識

乳幼児服薬指導加算の基本知識

乳幼児服薬指導加算は、6歳未満の乳幼児に係る調剤に対して、必要な情報を患者さままたはそのご家族に確認した上で服用に関して必要な服薬指導を行い、当該指導の内容などを薬歴および手帳に記載した場合に「服薬管理指導料」または「かかりつけ薬剤師指導料」の項目で12点を所定点数に加算できます。

乳幼児は、薬物動態が成人とは大きく異なります。また、服薬行為に対する理解を得ることも難しいでしょう。そのため、薬剤師には乳幼児の年齢に応じた丁寧な服薬指導と、保護者に対する適切な説明が求められます。

▼参考資料はコチラ
調剤報酬点数表(令和6年10月1日以降、順次施行)|日本薬剤師会
令和6年度診療報酬改定の概要 【調剤】|厚生労働省
別表第三 調剤報酬点数表|厚生労働省
別添3 調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

乳幼児服薬指導加算の算定要件

乳幼児服薬指導加算の算定要件

乳幼児服薬指導加算の算定には、以下の要件を満たす必要があります。

○受付時の確認事項

  • 年齢(6歳未満であること)
  • 体重
  • 適切な剤形
  • その他必要な事項(アレルギー歴など)
  • ○服薬指導の実施、要点の記載

  • 患者さまやご家族に対する適切な服薬方法の説明
  • 誤飲防止や安全管理に関する指導
  • 個々の状況に応じた具体的なアドバイス
  • 確認事項や指導内容を薬歴および手帳に記載
  • また、乳幼児服薬指導加算を算定した処方箋中の薬剤の服用期間中に、患者さまのご家族から電話などにより当該処方薬剤に係る問い合わせがあった場合には、適切な対応及び指導などを行うとともに、その要点を薬歴などに記載することも算定要件のひとつです。

    ▼参考資料はコチラ
    別添3 調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
    各種法令による児童等の年齢区分|厚生労働省

    乳幼児服薬指導加算をとる際の服薬指導5ケース

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    現場で活かせる服薬指導例を、5つのケースに分けて解説します。

    初めて粉薬を服用する場合

    乳幼児が初めて粉薬を服用する際は、以下のような点を伝えられると良いでしょう。

    粉薬を初めて服用する乳児には「スポイト」の使用がおすすめ

    粉薬を初めて服用する乳児の場合、粉薬を水で溶かし、スポイトで服用させる方法がおすすめです。その際、量が多いと吐き出すお子さまもいるため、スポイトのメモリで0.5mlずつ服用させるよう伝えましょう。

    乳幼児には「お薬団子」での服用もおすすめ

    乳幼児には粉薬に水を加えてお薬団子またはペースト状にしたものを頬の内側に塗布する方法も有効です。スポイトで飲ませるよりも薬が直接舌に触れることが少ないため、薬の味を感じにくいというメリットも合わせて伝えられると良いでしょう。

    服用拒否がある場合

    服薬を嫌がる乳幼児に対しては、具体的な服用方法を伝えましょう。例文は以下の通りです。

    ▶服用のタイミング
    小さいお子さまの場合、食後だとお腹がいっぱいで薬を飲みたがらなかったり、授乳後だと吐き戻してしまったりすることがあります。この薬は食事に関係なく飲めるので、ミルクや授乳の前、お腹が空いているタイミングで試してみてください。
    ▶苦味のある薬(マクロライド系抗生物質)の服用方法
    苦味のある薬は、アイスやココア、練乳、プリンに混ぜると飲みやすくなります。反対に、スポーツ飲料やオレンジジュースなどの酸味のあるものと混ぜると、苦味が増して飲みにくくなることがあるので避けましょう。

    服用のタイミングにつきまして、小児の薬の多くは食前に飲んでも問題ないとされていますが、まれに食後に服用すべき薬もあるため注意しましょう。

    また、乳幼児が薬を嫌がる主な理由は、味やにおい、口当たりなどの嗜好性によるものです。特に、薬の苦みは服薬を嫌がる大きな要因となります。

    嫌がってどうしても服用させることが難しい場合には、食品との混合を検討するよう伝えましょう。ただし、食品との混合でかえって苦味が強くなる薬や、薬効が減弱する薬には注意が必要です。

    外用薬が処方されている場合

    外用薬の服薬指導に関して、例文は以下の通りです。

    ▶テープ剤
    テープ剤はお子さまが気になって剥がしてしまうことがあるため、背中など手の届きにくい部位への貼付がおすすめです。同じ部位に続けて貼付すると、皮膚のかぶれを起こす可能性があるため、添付部位は毎回変えるようにしてください。また、傷口や湿疹のある部位への貼付は避けましょう。
    ▶軟膏剤
    軟膏剤は適切な量を塗布することが重要です。大人の人差し指の先端から第一関節までの量を目安に塗布してください。塗り方は、皮膚に優しく伸ばすように塗り、強く擦り込まないようにしましょう。

    なお、塗り薬は、医師の指示を確認し、塗り方の指導を行いましょう。乳幼児外来で遭遇する頻度の高い皮膚疾患に処方される外用薬に関しては、以下の記事も参考にしてみてください。

    坐薬が処方されている場合

    坐薬の使い方に関して、例文は以下の通りです。

    ▶坐薬の使い方
    お子さまを仰向けに寝かせて両足を上げ、肛門に坐薬のとがった方を入れて30秒~1分くらい軽く押さえてください。入りにくい場合は坐薬の表面に水またはオリーブオイル、ベビーオイルをつけることで滑りやすくなり、肛門に入れやすくなります。
    また、挿入後すぐに便と一緒に坐薬が出てしまった場合には、もう一度同じ坐薬を入れましょう。ただし、挿入後30分以上経っていればほとんど吸収されているため、そのまま様子を見てください。

    誤飲防止の注意喚起

    乳幼児の誤飲事故を防ぐために、以下のような注意喚起が重要です。

    ▶保管方法
    間違えて服用することがないよう、必ずお子さまの手の届かない場所に保管してください。
    ▶兄弟がいる場合
    兄弟で薬が処方されている場合は、それぞれの薬を間違えないよう、名前をよく確認してから服用させましょう。
    ▼参考資料はコチラ
    松本康弘 著/日経ドラッグインフォメーション 編:極める! 小児の服薬指導 改訂版.日経BP,2024

    小児の薬物療法の服薬指導ポイントを解説している動画もあります。
    動画で確認したい方は、下記の関連動画をご覧ください。

    【Q&A】よく聞かれる質問について

    【Q&A】よく聞かれる質問について

    乳幼児服薬指導加算に関して、薬剤師がよく抱く疑問について解説していきます。

    Q1.外用薬のみの処方でも算定できますか?

    算定要件を満たしていれば、外用薬でも算定できます。
    ただし、保険者によっては外用薬のみでの算定を認めないケースもあるため、確認が必要です。

    Q2.お薬手帳を持参し忘れた場合はどうすればよいですか?

    お薬手帳を利用しているが持参し忘れた患者さまの場合、指導内容を記載したシールを交付することで算定可能です。
    ただし、次回来局時にそのシールが手帳に貼付されているか確認する必要があります。

    Q3.お薬手帳を利用していない患者さまの場合は?

    お薬手帳を利用していない患者さまの場合は、お薬手帳を交付し、その手帳に指導内容を記載することで算定可能となります。
    また、この機会にお薬手帳の意義や活用メリットを説明し、継続的な使用を促すことが望ましいでしょう。

    Q4.紙のお薬手帳ではなく「電子版お薬手帳」を使用している場合でも算定できますか?

    電子版お薬手帳を使用している場合でも、乳幼児服薬指導加算の算定は基本的に可能です。
    ただし、厚生労働省のガイドラインに準拠していることが条件となります。そのため、使用している電子版お薬手帳が適切な機能を備えていることを確認し、必要な情報を正確に記録することが重要です。
    また、地域の審査支払機関に確認することも推奨されます。

    Q5.指導内容によって算定できない場合はありますか?

    特別な指導や対応が必要な場合のみ算定できる訳ではありません。
    算定要件(年齢確認、体重確認、適切な剤形の確認、必要な指導の実施、薬歴や手帳への要点記載)を満たしていれば算定可能です。

    ▼参考資料はコチラ
    事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省保険局医療課
    個別指導における 主な指摘事項(薬局)|地方厚生局

    適切な乳幼児服薬指導を実現するために

    本記事では、乳幼児服薬指導加算の基本知識や算定要件、具体的な服薬指導例、よくある疑問点について解説しました。

    算定要件をしっかり理解し、一つ一つの指導を確実に行うことで、適切な薬物療法の実現に貢献できます。
    乳幼児服薬指導加算を通じて、患者さまのご家族と良好なコミュニケーションを築きながら、乳幼児への服薬指導の質向上に繋げていきましょう。

    馬場の写真

      監修者:馬場 布由佳(ばば・ふゆか)さん

    現役の薬剤師として医療現場に携わる顔を持つ一方、医療情報を専門に扱うライターとして独立。執筆のほか、ディレクションや医療系メディア運用のサポートに従事。

    メディカルライターチームの運営を行なっており、医療,健康,介護,美容などのメディア記事執筆をはじめ、セミナーの記事化や資料制作なども提案から執筆、運用まで提供している。

    調剤薬局のほかドラッグストア勤務経験もあり、健康知識のほか、一般用医薬品についての執筆も得意とする。

    記事掲載日: 2025/03/11

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