業界動向
2019.12.06

薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?- 患者さま編 -

薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?- 患者さま編 -

薬剤師に求められるコミュニケーションについて、帝京平成大学・薬学部教授の【井手口直子先生(いでぐち・なおこ)】に聞く連載の第2回です。

前回は基礎編として、「薬剤師に求められるコミュニケーションスキル」の概要をご紹介しました。今回は、<患者さま>とのコミュニケーションに着目してお話を進めます。すぐに実践できる内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

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話す前に、相手がどんな気持ちなのか考える

患者さまとのコミュニケーションで気をつけるべきことを教えてください。

話す前に、相手が今どんな気持ちなのかを考えることですね。相手の気持ちを察知してから話し出さないとトラブルの元になります。一般的に、相手の気持ちをキャッチしないで話す人は、トラブルになりやすいのです。

当たり前ではありますが、目の前の患者さまの感情を汲み取る必要があるのですね。

患者さまが急いでいないか、辛そうにしていないか、機嫌の良し悪しを含めてチェックします。機嫌が悪い理由はさまざまなので、それに配慮した間合いを取ることも必要です。

それができていない人は、自分のことばかり考えている証拠。仕事が忙しいから早く薬を渡したいとか、相手が不安そうなのに一方的に話してしまうとか、つい上から目線でものを言ってしまうなど...。患者さまを一人の人間として捉えていないのですね。

患者さまとしては、自分の感情を捉えてくれないまま話をされると戸惑いますよね。

患者さまは具合が悪いからこそ病院に来られるのです。それだけでも辛いのに、待合室で待たされて、会計の時もさらに待たされて...。そうしてようやくの思いで薬局に来られます。そのような気持ちを薬剤師がキャッチしないで話を進めてしまったら、患者さまはどう感じるでしょうか? 今一度、自分の振る舞いを省みると良いかもしれません。

患者さまの不安を解消するコツは、感情をキャッチすること

井手口直子先生

そもそも患者さまは、病気に関して不安を抱えながら薬局に足を運んでいると思います。薬剤師として、患者さまの不安を解消するためのコツはありますか?

まず不安を受け止めないと、患者さまが抱える不安がわからず、どう解消すべきかもわかりません。まずはしっかりとお話しをお聞きしましょう「今、心配なことはありますか?」と問いかける形がいいですね。デキる薬剤師は、自分が説明している際の患者さまの反応や相づちのスピードなどを敏感に感じ取っています。そのうえで、患者さまの顔を見つめたり、声のトーンを変えたり、「わかりにくかったですか?」と問いかけたりしています。

不安を解消するためには、まず患者さまの感情をとらえ、不安なことを打ち明けてもらえるような質問と態度を取りましょう。そして、相手から出てきた話の内容を受け止めます。ただし、一言目に出てきた言葉がその患者さまが本当に言いたいことではない可能性もあるので、さらに質問してその人の本音を聞き出してください。

患者さまへの的確な言葉の選び方とは

本音を聞き出すには言葉のチョイスが鍵と考えます。言葉の選び方を教えてください。

たとえば薬の説明なら、わかりやすい言葉を使い、専門用語を多用しないということですね。そして、患者さまに確認を取る質問をするようにしてください。新薬が出た時には、「今の説明でわかりにくいことはありましたか?」とか「何か質問はありますか?」など、患者さまへの配慮を忘れないようにしましょう。

その際、患者さまが処方内容を理解していないと相手から質問は出てきませんので、薬剤師側から問いかけるようにしてください。たとえば、「今日この薬について説明しましたが、この薬の目的についてどのように理解されましたか?」という形です。上から目線で質問しないよう注意してくださいね。

<開いた質問>と<閉じた質問>を使い分ける

井手口直子先生

患者さまには、たくさん話す人もいれば口数の少ない人もいると思います。相手によって質問を変える必要はあるのでしょうか。

その通りです。質問には、<開いた質問>と<閉じた質問>があります。開いた質問というのは、「最近具合はいかがですか?」というものです。答えの範囲が広いため、言葉を頭の中で構築して答えなければなりません。そのため、口数の少ない人は返答に悩んでしまうのですね。また、閉じた質問というのは、『はい』か『いいえ』など端的に答えられるような質問です。たとえば、「ハンバーグとカレー、どっちがいい?」のようなものですね。

たくさん話す人は、開いた質問で問題ありません。一方で、口数の少ない人に開いた質問をしてしまうと、「具合はいかがですか?」→「変わらないよ」で終わってしまい話が進みません。得られる情報も少ないでしょう。

気軽に相談できる薬局を目指して

薬局をより身近に感じていただくために、地域のかかりつけ薬局としての機能を果たすことも大切な手段と考えます。その際に、薬剤師として必要なことは何でしょうか?

相談業務をどこまで広げるかでしょうか。本来、薬局というのは健康サポートや未病予防の段階から相談に乗らなければなりません。そのために、「処方箋がなければ入れないという薬局のイメージ」を打ち崩さないといけないと思っています

まずできることは、薬局内でOTC医薬品や健康食品を販売することです。患者さまが入りやすいレイアウトにするという方法もあります。そして自分自身が、「『かかりつけ薬剤師』として患者さまをフォローしたい」という意識を持つことが必要です。かかりつけ薬剤師というのは、患者さまの薬の一元管理をはじめ、さまざまな相談に乗る存在。より深く患者さまとお付き合いしようとする姿勢が求められます。

現実的な話として、3年以上薬局で働いていて、その薬局に1年以上在籍するなど諸条件をクリアすれば、『かかりつけ薬剤師指導料』を算定できる人になれます。薬局の経営者はそれを期待しているのです。

しかしながら、かかりつけ薬剤師の資格を取らない方も多いとお聞きしています。

なぜ、かかりつけ薬剤師になることに抵抗をもつのかというと、かかりつけ薬剤師指導料の算定によって患者さまの負担が増えるからです(3割負担の場合60~100円の追加負担が必要)。同じ相談に乗っているとしても、かかりつけ薬剤師としての相談だと負担が増えるのが申し訳ないと考える薬剤師が多いのですね。とはいえ、かかりつけ薬剤師としての指導は、一般的な指導に比べて付加価値のあるサービスなので、同じではないと薬剤師自身が理解することが重要です。

今後、薬局にできることが増えていくと思われますか。

薬局ができることはたくさんあります。調剤業務だけではなく、その人の健康相談などですね。コミュニケーションを取ってはじめてわかることがあります。

たとえば、窓口で急いでいる患者さまがいるとします。その人は、もしかしたら認知症になり始めたお母さまと暮らしているのかもしれません。奥さまが更年期障害を抱えながら介護をしている可能性もあります。このような患者さまの背景は、ある程度コミュニケーションを取らなければわかりません。

裏を返せば、そういった事実がわかった瞬間にさまざまなサポートができるということ。奥さまに対しては、更年期障害を治療するお薬や病院の紹介が可能ですし、お母さまに対してはケアマネジャーさんや地域包括ケアシステムの紹介などができます。薬局を通じて介護用品の販売もできるでしょう。

最後に、常に患者さまに寄り添う薬剤師になるためにできることは何でしょうか?

まずは一人でも良いので、自分のかかりつけの患者さまをつくることですね。すると、薬剤師にできることがたくさん見えてきます。そうなれば、薬剤師の仕事がよりやりがいに満ちたものになっていくことでしょう。

読者のみなさんのなかには、チャレンジすることを躊躇してしまい「かかりつけ薬剤師にはならなくてもいいかな...」と考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、かかりつけ薬剤師はより社会から求められる存在になるでしょう。少しでも興味があれば、かかりつけ薬剤師を目指してみると良いかもしれません。

井手口直子先生の写真
  • 井手口直子(いでぐち・なおこ)先生

薬剤師。帝京平成大学薬学部薬学科 教授。帝京大学薬学部卒業後、新医療総合研究所代表取締役、日本大学薬学部専任講師を経て現職。日本ファーマシュティカルコミュニケーション学会常任理事、日本地域薬局薬学会理事、日本緩和医療薬学会評議員等を務める。

主な著書に、『ファーマシューティカルケアのための医療コミュニケ-ション』『薬学生・薬剤師のためのヒューマニズム』『薬剤師のためのコミュニケーションスキルアップ』などがある。現在、ラジオNIKKEI の医療インタビュー番組『井手口直子のメディカルカフェ』のパーソナリティとしても活躍中。

▼WEBサイト:井手口直子のメディカルカフェ

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記事掲載日: 2019/12/06

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