業界動向
2020.01.10

薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?- 職場スタッフ編 -

薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?- 職場スタッフ編 -

間違いの許されない医療現場での業務に加え、限られた空間で日々仕事をする薬剤師は、特にストレスを抱えやすいとされています。なかでもとにかく多いと言われるのが、狭い薬局内での人間関係による問題です。

本連載の第1回〜第3回では、コミュニケーションスキルの基礎から患者さま・医療関係者との関わり方について、帝京平成大学・薬学部教授の【井手口直子(いでぐち・なおこ)先生】にお話を伺ってきました。

第4回となる本記事では、薬剤師のもっとも近い存在である<職場スタッフ>と上手なコミュニケーションを取るために必要なことを井手口先生に解説いただきます。

新着の薬剤師求人特集

訪れた患者さまにとって、居心地のよい空間づくりを

薬局という狭い空間のなかで、苦手な人ともうまくやってくためにはどうすればいいのでしょうか?

第一に、仕事は一緒に働く人と仲良くなるためにしているわけではありません。職場にタイプの合わない同僚がいたとしても、「仕事に徹する」のが一番だと思います。

とは言え、簡単に割り切れるものではないでしょう。だからこそ、ストレスをためないように意識することが大切です。それには、嫌いな人をつくらないようにするといいでしょう

狭い薬局では、毎日同じ人と顔を合わせなければならないので、「嫌いな人がいる」と思うこと自体がストレスになってしまいます。合う・合わないは誰にでもあると思いますが、合わないから"嫌いな人"と捉えて極端な態度をとる必要はないのではないでしょうか。

私には基本的に嫌いな人はいませんが、嫌いにならないための努力もします。合わないと感じたときには、最初の頃に親切にしてもらったことや、過去に助け合ったときの記憶を思い出して感謝の気持ちをもつようにするのです。相手が悪いと思うとうまくいかないので、自分も相手も完璧ではないことを理解するべきだと思います

一度意識してしまうと、そのあとの対応もぎこちなくなってしまいそうですが...。

合わない人に好かれなくてもいいけれど、仕事に支障が出ないように一定の関係を保つことは必要です。挨拶は基本なので、絶対に無視などしてはいけません。また、年齢が上の場合にはきちんと敬語を使いましょう。薬剤師のなかには、年齢が高い部下やパートさんといったいろいろな立ち位置の方がいます。年上の方には必ず敬意を払って、言葉遣いなどに気をつける。そうした気遣いは人としての基本です。

職場の雰囲気は、働くスタッフたちだけでなく、訪れた患者さまにも伝わります。患者さまが気持ちよく薬局に来られるようにするためには、その薬局で働くスタッフたちが居心地のよい環境をつくらなければいけません。自分が意識することはもちろんですが、これは薬局のみんなで努力をする意識をもって欲しいと思います。

転職者は「郷に入れば郷に従え」。新しい職場に慣れることを最優先に考える

井手口直子先生

転職先での勤務で、気をつけることはありますか?

薬剤師の場合は、病院や薬局など勤める場所によっても環境が異なります。そのため、自分のやり方が確立していて、「このやり方は違う」と感じたとしても、しばらくは"転職先のやり方でやってみる"ことをお勧めします。変えたい点があるなら先々変えていけばいいので、まずは転職先でのやり方を一通り覚えるのが最優先です。

それでも違和感を感じるのであれば、上司に相談してみるといいでしょう。入社する際の面接で対応するのは管理者だけのことも多く、その薬局の業務に関して1から10まで理解できないまま現場に入る場合もあります。働く中で違和感を感じたら、それを無理に貫こうとするのではなく、まずは身近な上司に相談してみるのが大切です。

思いを尊重し、共感する。管理薬剤師との上手な付き合い方

管理薬剤師との上手な付き合い方について、教えてください。

管理薬剤師にはシフトをつくる業務もあるので、関係が悪いと休み希望が出しにくかったり、融通を利かせて欲しいときに頼みづらかったりと精神的にもしんどいですね。それに管理薬剤師にも、ズケズケとものをいう人、言葉数が少ない人など様々なタイプの人がいます。そうした個人の性格による問題は、時間が経つにつれて徐々に出てくるでしょう。

苦手な管理薬剤師とうまくコミュニケーションを取るにはどうしたらいいでしょう?

まずは、管理薬剤師がどのような想いで働いているのかをキャッチすること。そして、「なぜ自分が馴染めないのか」を考えていくことが大切です。整理するべきなのは、こちら側の想いと向こう側の想い。そして、馴染めなくてしんどい気持ちは、面接してくれた人など誰かしらに相談した方がいいですね。コミュニケーションエラーは、初日からうまくいかなかったわけではなく、どこかでボタンを掛け違えてしまって起こるものです。

苦手な管理薬剤師ともうまくやっていくために、大切なことを教えてください。

やはり相手を思いやるような声かけができる人はうまくやれるのだと思います。たとえば、「大変そうですね。残って手伝いましょうか?」と声をかけるだけでも違うと思いますよ。

それから、きちんと報告をしましょう。何かミスや失敗があったときは、速やかに伝えなければなりません。これは普通のビジネスマンも同じですが、薬剤師の場合はビジネスマンとしての所作や心得を学ばないまま現場に出るので、名刺の受け渡しもろくにできない薬剤師は意外と多いのです。

大切なのは、相手の立場に立って考えてみることです。自分のペースを変えなかったり、言い訳をしたりするのもよくありません。働きやすい環境をつくっていくためには、職場の流れを読みながら行動するのです。ただし、管理薬剤師が独善的な場合には、自分がストレスをためないよう、転職コンサルタントに相談するのもひとつの方法だと思います。

新しいスタッフへの配慮。人材育成は、そこで働くすべての人に責任がある

井手口直子先生

新しく入った方に対して、既存の薬剤師ができることはありますか?

まずは、その人が働きやすいように配慮し、居場所をつくってあげる必要があるでしょう。できることからはじめて、慣れてきたら少しずつ貢献してもらいます。とくに新人の場合はそうですね。しかし、ひとり新人が入れば職場の雰囲気も変わります。

ある管理薬剤師の方は、一緒に働く薬剤師が新しく転職してきた人に対して「仕事が遅い」「なかなか覚えてくれない」「本部に戻して欲しい」というような不満を聞かされるそうです。この場合は、職場の雰囲気が間違っていると思います。

本来、既存の薬剤師はどうあるべきなのでしょうか?

誰にも何も言われなくても、薬剤師には求められていることが3つあります。1つ目は「高い専門性の発揮」、2つ目は「業務管理能力」、3つ目が一番重要な「人材育成」。とくに3つ目は、言葉にして言われるわけではないけれど、新人であろうと転職者であろうとそこで働くすべての薬剤師に求められています。そして人材育成は、1から10まで全部教えましょうというのではなく、「みんながそれぞれ持っている能力を生かせるように個々が考えてやっていきましょう」ということです。

ですから、もし仕事になかなか馴染めない人がいるとしたら、本来であれば一緒に働いている人もその人が仕事に馴染めるように行動をしなければなりません。ただ新人への不満を言う人は、「人材育成は管理薬剤師の仕事で、自分の仕事ではない」と考えているのでしょう。とはいえ、直接言われるわけではないので、人材育成は自分の仕事でないと考える人がいることは仕方のないことかもしれません。

人材育成は、上司が部下に対して行なうものと思われがちです。もちろん、間違いではありませんが、同僚同士で指摘しあうことも人材育成です。先ほど出てきた、新人への不満を言う同僚がいれば、それは感じが悪いと指摘してみる。そうして、誰もが働きやすい環境をつくるのが人材育成と考えます。

薬剤師免許の交付は、責任感の付与。そこで働く一人ひとりが責任ある行動を

薬剤師の免許は、3つの責任感の付与だと思います。

1つ目は、「リスクマネジメントの責任」。命に関わることなので、間違えてしまったら自分が責任を持つという覚悟が必要です。自分の仕事にハンコを押すのは、何か間違いがあったときに「 私が責任をとります」というサインです。薬剤師がハンコを押すものは、自身で調剤や投薬を行ったもので、それに対しての責任の所在を表しています。とは言え、責任といっても、薬局で働く際は賠償保険に入っており、あなた一人がすべての責任を負いきることはないかもしれません。それでも、何か間違いをしてしまったとき、患者さまから名指しで指摘されてしまえば重たい責任を感じるでしょう。

2つ目は、「能力開発の責任」。薬剤師には生涯学習の義務があります。現場で働く以上は、どんどん医療や薬が開発されるので、更新される情報をしっかりと勉強しなければいけません。ちなみに、職場の勉強会などの教育制度に頼り切りなスタンスの方は考えを改めましょう。組織として研修を行うのは、薬剤師が自力で学習することをサポートするため。本来は自分で勉強することが求められています。

3つ目は、「キャリアマネジメントの責任」。薬剤師免許は、"国家試験を合格したご褒美"というような甘い考えではいけません。薬剤師免許を取得したからこそ、自分がどんなふうに自分のキャリアを築いていくかというキャリア開発の責任は、自分でもたなければならないのです。

私は、これらの責任感の付与が薬剤師免許の意味だと捉えています。薬剤師免許を取得した以上は、薬剤師一人ひとりがプロとして自覚のある行動が求められます。大切なのは、自分の思いを一方的に伝えるのではなく、そこで働くすべての人が相手の思いを尊重して行動すること。そうすれば、職場の雰囲気もグッと居心地のよいものになるはずです。

まとめ

限られた空間で毎日顔を合わせる職場スタッフ同士だからこそ、陥りやすい人間関係の問題。とくに薬剤師が転職を考えるときは、人間関係が理由となるケースがもっとも多いと言われています。

しかし、職場スタッフ同士のコミュニケーションは、日々のちょっとした気遣いで改善できるものがほとんどなのかもしれません。一緒に働く仲間とよい関係性を築き、お互いのポテンシャルを高め合える関係になれれば、それはとても素敵なことです。

▼▼『薬剤師のためのコミュニケーション講座』一覧


Vol.01 【基礎編】薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?
Vol.02 薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?- 患者さま編 -
Vol.03 薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?- 医療関係者編 -
Vol.05 薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは? - 生き残る薬剤師になるために必要なこと -
井手口直子先生の写真
  • 井手口直子(いでぐち・なおこ)先生

薬剤師。帝京平成大学薬学部薬学科 教授。帝京大学薬学部卒業後、新医療総合研究所代表取締役、日本大学薬学部専任講師を経て現職。日本ファーマシュティカルコミュニケーション学会常任理事、日本地域薬局薬学会理事、日本緩和医療薬学会評議員等を務める。

主な著書に、『ファーマシューティカルケアのための医療コミュニケ-ション』『薬学生・薬剤師のためのヒューマニズム』『薬剤師のためのコミュニケーションスキルアップ』などがある。現在、ラジオNIKKEI の医療インタビュー番組『井手口直子のメディカルカフェ』のパーソナリティとしても活躍中。

▼WEBサイト:井手口直子のメディカルカフェ

薬剤師限定の無料お仕事相談会を開催中!

記事掲載日: 2020/01/10

あわせて読まれている記事