服薬指導に活かす医薬品情報

コレクチム軟膏

Q

何のお薬?処方目的は?

A

アトピー性皮膚炎」のみに適応を有します。

Q

用法・用量・薬物動態は?

A

通常、成人には0.5%製剤を、小児には0.25%製剤を、1日2回適量を患部に塗布します。症状に応じて、小児でも0.5%製剤の塗布が可能です。1回あたりの塗布量は5gまで(体表面積の30%までを目安とし、小児は体格を考慮する)とされています。1FTUが約0.5gになるように新規設計された5gチューブが使用されています。また、0.5%製剤で治療開始4週間以内に症状の改善が認められない場合は使用を中止する、小児に0.5%製剤を使用し症状が改善した場合は、0.25%製剤への変更を検討することとされています。
動物実験で胎児や乳汁への移行が確認されているため、妊婦への投与は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ、授乳も有益性を考慮して継続か中止を検討すること、とされています。反復塗布による蓄積性はありません。
ちなみに薬剤名称の由来は「免疫(IMMUNO)をただす(CORRECT)」です。

FTU(フィンガーチップユニット)について
FTUは大人の人差し指の先から第一関節まで薬を乗せた量で、通常は口径の小さい5gチューブでは0.2g程度、10gチューブでは0.3g程度となり、1FTU=約0.5gになるのは25~50gチューブの場合です。(※第一三共ヘルスケア「ひふ研」より)

Q

作用機序は?

A

本剤は、JAK/STAT経路を活性化するすべてのサイトカインシグナル伝達を阻害し、各種サイトカインにより誘発されるT細胞、B細胞、マスト細胞及び単球の活性化を抑制して、アトピー性皮膚炎の炎症を抑制します。また、サイトカインにより誘発されるフィラグリンなどの皮膚バリア機能関連分子の発現低下及び掻破行動を抑制します。

Q

ステロイド外用剤との違いは?

A

各種ステロイド外用剤の薬効薬理は、製剤ごとに作用の強弱はあれども、サイトカイン産生の誘導や細胞内転写因子の機能を抑制することで、炎症を制御すると考えられています。一方で、皮膚バリア機能関連分子の発現低下の抑制効果はないと考えられています(本剤IF参照)。
ステロイド外用剤では皮膚萎縮毛細血管拡張といった局所副作用が起こりうることや、部位によって吸収率が異なるため部位ごとに薬を使い分けるケースもありますが、本剤ではこれらの問題を回避できる点が大きな差異となります。

Q

タクロリムス(プロトピック)との違いは?

A

タクロリムスも免疫抑制作用を持ちますが、特にT細胞からのサイトカイン産生を強く抑制するという特徴があります。皮膚バリア機能関連分子の発現低下の抑制効果については報告されていません。
タクロリムス軟膏では使用初期に灼熱感が起こることがあり、刺激が強く塗布継続が難しい事例もありますが、本剤ではこの問題を回避できることが大きな差異となります。

【適応と薬価についての比較】
薬剤 適応 薬価
コレクチム軟膏 アトピー性皮膚炎 高価
ステロイド外用剤 湿疹・皮膚炎群など多岐 安価
タクロリムス アトピー性皮膚炎 やや高価

総評として、既存のアトピー性皮膚炎治療用の外用剤と比較して、使用部位に縛られず、灼熱感や皮膚萎縮などの懸念が少ない薬剤ですが、アトピー性皮膚炎以外の炎症性皮膚疾患には適応を持たず、比較的高額である点に注意が必要です。


掲載日: 2022/04/28
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