服薬指導に活かす医薬品情報

ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)

Q

何のお薬?処方目的は?

A

神経が高ぶる、怒りやすい、イライラする、眠れない、まぶたの痙攣、手足のふるえや小児の夜なき、落ちつきがない、ひきつけなどの症状を改善します。


Q

服用方法は?

A

添付文書には「1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与、適宜増減」と記載があります。食間=食事中に服用、と誤解していないかの確認も含め、患者さま個々の生活リズムを把握したうえで服用コンプライアンス維持のための指導を行いましょう。



Q

高齢者へ投与する場合の注意点は?

A

一般に高齢者では生理機能が低下していますので減量するなど注意が必要です。安全性を考慮して、1日2回(5g/日)から開始し、効果がなければ1日3回(7.5g/日)に増量するという報告があります。


Q

注意すべき副作用は?

A

人によっては、過敏症(発疹、発赤、そう痒等)、消化器症状(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等)が報告されています(頻度不明)。重大な副作用として、間質性肺炎、偽アルドステロン症(血圧上昇、浮腫など)、低カリウム血症の結果として、ミオパシー、また、肝機能障害・黄疸があります。


Q

併用に注意すべき薬剤は?

A

カンゾウの主成分であるグリチルリチン酸は尿細管でカリウム排泄を促進します。これらは漢方薬、風邪薬、胃腸薬、肝疾患用の医薬品等に含まれており、併用により偽アルドステロン症があらわれやすくなります。また、ループ系利尿薬、チアジド系利尿薬、副腎皮質ホルモン、インスリン、β刺激薬、甲状腺ホルモンなどの併用による血清カリウム値の低下にも注意が必要です。


Q

認知症によく用いられる理由は?

A

認知症では認知性障害に続発ないし併発する非認知性の障害である精神症状や行動障害がみられ、これを行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と総称しています。認知症の中核症状に対し、ドネペジルなど複数治療薬が販売されていますが、BPSDは患者さまや家族・介護者に負担を強いるもので、抗精神病薬や抗うつ薬、気分安定薬、睡眠導入薬など、漫然と使用するケースも少なくありません。本剤は、BPSDの中でも陽性症状に対し有効であることが知られており、運動神経に関わるドパミンを抑制しないため多方面で効果のある安全な薬と期待されています。



神経伝達物質のアンバランスでBPSDが発現

脳内の神経伝達物質には興奮系物質のアセチルコリン、グルタミン酸、ノルエピネフリン、ドパミン、抑制系物質にはセロトニン、γ-アミノ酪酸(GABA)などがあり、認知症の方ではこれらのアンバランスを改善するため、症状に応じて適宜対症薬を漸減する必要があります。BPSDの治療薬の多くは抑制系の治療薬であり、ADLやQOLを保ちながら余分な精神症状をなだらかにすることが求められています。


Q

その他どのような疾患に効果がありますか?

A

レム睡眠行動障害、レストレスレッグス症候群(RLS)の不眠に効果があると報告されています。不眠症を適応症とし、ふらつきなどの副作用が少ないという特徴があります。また保険適応外となりますが、統合失調症、境界性人格障害、ジスキネジアなどに効果があるという報告もあります。チョウトウコウがβアミロイド蛋白質の凝集抑制作用やセロトニン神経系の機能異常改善作用を、カンゾウがグルタミン酸神経系の機能異常改善作用を有すると言われています。(【ツムラ】抑肝散.jp)


掲載日: 2023/09/21
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