服薬指導に活かす医薬品情報

フォゼベル錠 5/10/20/30mg(一般名:テナパノル塩酸塩)

ここがポイント!

  • 既存のリン吸着薬とは異なる作用機序で、腸管からのリン吸収を阻害することにより高リン血症を改善する
  • 下痢が高頻度に認められている
  • 透析中に排便を催すことが心配な場合、透析直前の服用は控え、朝夕以外の食直前に服用してもよい
  • Q

    【何のお薬?処方目的は?】

    A

    適応症は「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」です。

    慢性腎臓病患者では腎機能低下により尿中へのリンの排泄量が低下しますが、高リン血症の状態が続くと、副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌されるようになり、骨からカルシウムやリンが流出してしまいます(二次性副甲状腺機能亢進症)。
    その結果骨がもろくなり、骨折しやすくなったり、体内で増加したリンとカルシウムが骨以外の血管や心臓、関節等の軟部組織に沈着して石灰化し硬くなったりすることで、心臓病や脳卒中の発症リスクが高まります(異所性石灰化)。


    高リン血症治療に用いられるリン吸着薬は、腸でリンと結合して吸収を阻害しますが、高カルシウム血症、便秘を主とする胃腸障害等の副作用や、服用のしづらさ等があります。
    フォゼベルは、既存のリン吸着薬とは異なる作用機序の薬剤で、腸管上皮細胞にあるNHE3を阻害し、細胞間隙のリン透過性を低下させることにより、腸管からのリン吸収を阻害します。

    Q

    【用法・用量は?】

    A

    通常、1回5mgを開始用量とし、1日2回、朝食及び夕食直前に経口投与します。朝食直前に飲み忘れた場合は、昼食直前に服用しても構いません。


    症状、血清リン濃度の程度により適宜増減しますが、最高用量は1回30mgです。増量は、1回5・10・20・30mgの順に1段階ずつ、1週間以上の間隔をあけて行います。
    休薬後再開する場合は、休薬前と同量あるいは1段階減量した量で再開します。

    Q

    【併用禁忌は?使用上の注意点は?】

    A

    2歳未満の患者機械的消化管閉塞又はその疑いがある患者には禁忌です。また、炎症性腸疾患又は下痢型過敏性腸症候群の患者は、病態を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

    Q

    【主な副作用は?対策は?】

    A

    フォゼベルの作用するNHE3は、Na++/H交換輸送体であり、これが阻害されることにより消化管からのNa吸収低下に伴い消化管へ水分が引き込まれる働きがあるため、下痢が高頻度に認められています(61.3%)


    下痢に伴う口渇や手足のしびれ、強い倦怠感、血圧低下等があらわれた場合には、速やかに医師または薬剤師に相談するよう患者に指導しておき、これらの症状が認められた場合には、休薬や投与中止の検討、脱水の是正等適切な処置を行います。


    なお、透析中に排便を催すことが心配な場合は、透析直前の服用は控え、朝夕以外の食直前に服用しても構いません。
    その他の主な副作用は、軟便(1~5%未満)、悪心、排便回数増加、腹部膨満、嘔吐、腹痛、低リン血症(いずれも1%未満)などです。


    (2024年8月20日時点)

    掲載日: 2025/05/15
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

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