服薬指導に活かす医薬品情報

モイゼルト軟膏 0.3%・1%(一般名:ジファミラスト)

ここがポイント!

  • アトピー性皮膚炎に適応のある、本邦初の外用PDE4阻害剤。
  • 0.3%と1%製剤あり。小児への使用は規格に注意を。
  • 患者さま向けRMP資材を活用し、適正使用を指導しましょう。
  • Q

    【何のお薬?処方目的は?】

    A

    ホスホジエステラーゼ(PDE)4の活性を阻害し、軽症から中等症のアトピー性皮膚炎の症状を改善します。


    アトピー性皮膚炎の患者さまの末梢血白血球ではPDE4様活性が亢進し、細胞内cAMP濃度が低下していることが報告されています。

    PDE4はcAMPを分解する酵素であるため、PED4を阻害することにより炎症細胞内のcAMP濃度を高めます。これにより種々のサイトカイン産生が制御され、皮膚の炎症が抑制される仕組みです。


    既存のPDE4阻害薬としては、経口薬のアプレミラスト(オテズラ)が乾癬等の適応で臨床使用されています。


    【アトピー性皮膚炎の薬物治療】


    アトピー性皮膚炎外用薬(非ステロイド)
    カルシニューリン阻害薬 ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬 PDE4阻害薬
    一般名 タクロリムス水和物軟膏 デルゴシチニブ軟膏 ジファミラスト軟膏
    商品名 プロトピック コレクチム モイゼルト
    規格 0.03%小児用、0.1% 0.25%、0.5% 0.3%、1%
    適応年齢 2歳以上 6ヵ月以上 3ヵ月以上
    1回塗布量上限(成人) 5gまで 5gまで(体表面積の30%まで)
    販売開始 1999年11月 2021年6月 2022年6月

    アトピー性皮膚炎の治療は、病態に応じて薬物療法、皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア、悪化因子の検索と対策が基本となり、これらを個々の症状の程度や背景などを勘案し適切に組み合わせます。


    外用薬治療では、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏が長年使用されてきましたが、それぞれ皮膚萎縮や毛細血管拡張、使い始めの皮膚刺激感などの副作用もあります。


    近年、デルゴシチニブ軟膏や本剤が発売され、新たな選択肢となりました。

    また、経口薬や注射薬でも新たな全身療法が登場し、中等症以上の治療の選択肢も広がってきています。
    ※本剤は、日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」での位置づけはまだ示されていません。

    Q

    【用法・用量、使用上の注意点は?】

    A

    成人には1%製剤、小児には0.3%製剤1日2回患部に適量を塗布します。
    小児にも症状に応じ1%製剤を使用できますが、症状が改善した場合は0.3%製剤への変更を検討します。1FTU(約0.35g)で大人の手のひら約2枚分の皮疹面積に塗布します。


    ○患部を刺激しないよう、のせるように塗りましょう。目安はティッシュが皮膚にくっつく程度に。


    保湿剤や他の抗炎症外用剤との併用に制限は設けられていません。
    しかしステロイド外用薬やタクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏を本剤と同一部位に塗布した場合の安全性に関するデータはなく、免疫抑制作用が増強される可能性もあるため注意が必要です。

    また、本剤は基剤中に微細な液滴として分散した液滴分散系軟膏であり、他剤と混合することは好ましくないとされています。


    ○本剤と他の外用剤が処方されていた場合は、使用部位や医師の指示を確認しましょう。

    Q

    【副作用や注意事項は?】

    A

    規定量では全身性副作用の報告は少なく、局所副作用に色素沈着障害(1.1%)、毛包炎、そう痒症などがあります。全身曝露が高くなる恐れのある粘膜、潰瘍部分を避け、免疫抑制作用から皮膚感染部位を避けます。


    妊娠や授乳への影響は不明な点が多く、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいです。また、妊娠可能な女性には投与中~終了後一定期間の適切な避妊を指導するとされています。


    ○医薬品リスク管理計画(RMP)が作成されています。患者さま向け資材を活用しましょう。


    (2024年9月10日時点)

    掲載日: 2025/06/19
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

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