- 公開日:2022.01.13
『保健所で働く薬剤師』の仕事内容は?年収や転職する方法についても解説【薬剤師のお仕事ガイド】
厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、保健所(衛生行政機関・保健衛生施設)で働く薬剤師は2018年時点で6,661人です。実際に就業数は増加傾向にあり、保健所での仕事に興味をもつ薬剤師が増えているといえるでしょう。
しかし仕事内容などについては、十分に理解できていない方も多いのではないでしょうか。今回は、保健所で働く薬剤師の仕事について、年収や転職するための方法とあわせて解説します。
保健所で働く薬剤師の仕事内容や役割
ここでは保健所における薬剤師の仕事内容などを説明します。
薬事衛生
薬事衛生とは、医薬品・医療機器などの有効性や安全性、あるいは品質を確保する目的で、これらを取り扱う業者(薬局、店舗販売業者、医療機器販売業者、卸売販売業者、毒物劇物一般販売業者など)への許可や監視、指導を行う仕事です。
そのほか、これらの安全な使用のための情報発信、薬物乱用防止のための啓蒙活動なども担っています。なお、医薬部外品や化粧品、サプリメント、健康食品などの管理も行っているので覚えておきましょう。
食品衛生
食品衛生は、食品の製造から販売、あるいは販売後の有害事象まで、食に関する安全確保のために飲食店や食品製造業者などに許可を出し、その後の監視や指導を行う仕事です。
食中毒予防を目的に、業者や一般住民に向けた啓蒙活動なども実施します。
生活衛生
生活衛生は、宿泊施設や温浴施設、あるいはクリーニング店や理容・美容室など生活に関わる業者に対し、衛生水準を一定以上に維持することを目的として、許可や届出、監視、指導などを行います。
水道衛生
水道衛生は、水道水を安全に供給するため、水道事業者に対して監視や指導を行う業務です。また、宿泊施設などの特定建築物での水質管理やプール施設の衛生管理についての指導も行います。
試験検査
試験検査では、様々な食品に含まれる添加物が規格基準を満たしているか検査したり、放射性物質などの化学検査を行ったりしています。
また、感染症対策などの健康危機管理や医療供給体制の整備、生活環境の保全、廃棄物衛生、さらに創薬研究や治験なども業務の一つです。
保健所で働く薬剤師の年収は?
就職・転職を考えるうえで、やはり気になるのが年収です。保健所で働く薬剤師の年収は、公務員の規定に準じます。そのため、転職時の年収交渉は行えません。あくまで国の人事院勧告に沿った金額設定となります。
薬剤師が保健所で働く場合の初任給は、調剤薬局やドラッグストアなどと比べて低めの20万円程度となるでしょう。しかし勤務年数に応じて段階的に年収が上がる仕組みが整っています。
そのため中長期的に見ると、他業種と比較して高い年収となる可能性もあるでしょう。また、公務員は退職金や福利厚生などの制度も充実しているため、結果として高年収になることも十分にあり得ます。
保健所で働くメリット・デメリット
続いて、薬剤師が保健所で働くメリットとデメリットを見ていきましょう。調剤薬局やドラッグストア、医療機関、企業での働き方と比べながら、自分にとって適した職場かどうかを考えてみてください。
メリット
●雇用が安定している
公務員として働く場合、基本的に解雇がないため長く安定して働けます。前述の通り、昇給制度が整っているというメリットもあるでしょう。
●残業が少なく有給休暇もとりやすい
保健所では長時間の残業が発生しにくく、有給休暇も取得しやすい環境です。むしろ定時退社や有給休暇の取得が推奨されます。
●福利厚生が充実している
公務員として手厚く充実した福利厚生を受けることができます。
たとえば、職員用の居宅に住める、休職した際にも復職しやすい、育児休暇を最大3年取得できるなどの福利厚生は民間企業と比べても手厚いといえるでしょう。
●幅広い業務に携われる
前述のように、保健所では薬剤師として実に幅広い業務があります。他業種では経験できない業務も多いでしょう。
●専門性を活かして地域に貢献できる
情報発信や啓蒙活動なども業務に含まれるため、地域貢献度の高い仕事です。たとえば公衆衛生は安全な生活に欠かせないものであり、専門性を発揮して貢献できることは大きな喜びとなるでしょう。
デメリット
●原則3年ごとの異動がある
公務員は多くの場合、3年ごとに異動があります。特定の職場や部署で働きたくても、異動が通達されれば従わなくてはいけません。
●病院や研究所などに配属の可能性がある
配属先が保健所ではなく、病院や研究所などになる可能性があります。「医療機関以外で働きたい」という理由で転職すると、ミスマッチが起きる可能性があるので注意が必要です。
●薬剤師としての経験が積みにくい
保健所の仕事は多岐にわたり、一般的な薬剤師業務とは異なる部分が多くなります。そのため、薬剤師としての経験が積みにくい仕事ともいえるでしょう。保健所から改めて他業種に転職しようと考えた場合、採用されなかったり、即戦力とみなされず待遇が悪くなったりするかもしれません。
保健所へ転職する際の注意点
保健所への転職を考えるなら、以下のような点に注意しましょう。
公務員試験に受かっても保健所の求人がない場合がある
公務員試験は「自治体の職員になる」ためのものです。前述の通り、試験に合格したとしても必ず保健所で働けるとは限りません。保健所で働く薬剤師の求人に対して直接応募した場合を除き、他部署へ配属される可能性がある点は注意しておいてください。
受験資格と年齢制限が設定されている
自治体によって異なりますが、受験資格や年齢制限が設定されている場合が多いでしょう。いくら保健所で働きたいと思っても、年齢の上限を超えていた場合は働くことはできません。
短期での転職や独立を考えている場合は向いていない
長く経験を積むことでキャリアアップが目指せます。転勤するケースも希少であり、長く働き続けたいという方に向いた仕事です。
転職を経ていろいろな仕事を経験したい、将来的に独立したいといった方は、避けた方が良いかもしれません。
安定して働くなら保健所薬剤師がおすすめ
今回は、保健所における薬剤師の仕事や年収、転職方法などを解説しました。近年、保健所の数は減少傾向にあります。一方で、感染症対策を担う人材の不足も叫ばれており、薬剤師の需要は高いでしょう。
保健所の仕事は地域への貢献度合が高く、これは大きなやりがいにつながるでしょう。公務員試験への合格など転職のためのハードルは高いですが、選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
ファルマラボ編集部
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