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  • 公開日:2021.08.02

バイオシミラーとは?後発医薬品との違いや変更調剤の可否など疑問を解決

バイオシミラーとは?後発医薬品との違いや変更調剤の可否など疑問を解決

先発医薬品の特許が切れた後に製造・販売され、「ジェネリック医薬品」として聞きなれた後発医薬品。バイオ医薬品にも、同じような位置づけにバイオシミラーがあります。

ここではバイオシミラーについて、ジェネリック医薬品との違いなどに触れながら詳しく解説していきます。バイオ医薬品についても理解を深められる内容ですので、ぜひ参考にしてください。

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そもそもバイオ医薬品とは?

そもそもバイオ医薬品とは?

バイオ医薬品は遺伝子組換えや細胞培養などバイオテクノロジーの技術を応用して製造された医薬品で、ホルモン、酵素、抗体などのタンパク質を有効成分としています

従来の医薬品では治療の難しかった疾患への効果も期待されており、そのほとんどが注射剤です。バイオ医薬品はすべて医療用医薬品で、OTC医薬品はありません。そして、従来の医薬品に対するジェネリック医薬品と同じように、バイオ医薬品にも特許期間が切れた後に製造・販売される「バイオシミラー(バイオ後続品)」があります。

バイオ医薬品の働き

バイオ医薬品に期待できるのが、体内に不足した生理活性タンパク質を補うことで病気を治療する働きです。たとえば、生理活性タンパク質の一つであるインスリンの不足は糖尿病の原因になります。バイオ医薬品で足りないインスリンを補うことで、糖尿病治療に役立てるのです。

また、体内では病原菌やウイルスなど外来性の異物が侵入すると、これに対して特異的に反応・結合する「抗体」が発生します。抗体は、病原菌やウイルスなどを攻撃する免疫のもととなる存在です。バイオ医薬品には抗体を有効成分とする「抗体医薬品」があります。たとえばがんの治療においては、抗がん剤でがん細胞を攻撃する化学療法が一般的ですが、正常な細胞も攻撃してしまい副作用も起こりやすい状況にありました。一方で抗体を有効成分とするバイオ医薬品(抗体医薬品)では、がん細胞の抗原に結合するためがん細胞を狙って攻撃でき、副作用を少なくすることが可能です。そのほか、関節リウマチやクローン病、腎性貧血など様々な疾患への治療に用いられています。

バイオ医薬品の副作用

バイオ医薬品は、標的とする分子への特異性の高さや体内でアミノ酸として代謝される性質をもつため、一般的な医薬品と比較すると副作用が少ないとされていますが、全くないわけではありません。

薬の効きすぎや有効成分が複数の作用をもつ場合、薬が作用する分子に複数の生理作用がある場合などに副作用が出たとの報告があります。また、体内で薬が受けつけられずアレルギー反応を起こす場合もあるため注意が必要です。

バイオ医薬品の後発品「バイオシミラー」とは?

バイオ医薬品の後発品「バイオシミラー」とは?

バイオシミラーは「バイオ後続品」とも呼ばれ、バイオ医薬品の特許期間が切れた後に製造・販売されたものです。先行バイオ医薬品(先に製造販売され特許期間が切れたバイオ医薬品)と類似した品質や有効性、安全性をもっています。

バイオシミラーとジェネリック医薬品の違い

ジェネリック医薬品は先発医薬品と有効成分の構造が変わらず、製造販売にあたっては生物学的同等性が証明できれば多くの場合で臨床試験を行う必要がありません。一方でバイオシミラーは、臨床試験を含めジェネリック医薬品よりも数多くの試験を行い、先行バイオ医薬品と同等の有効性や安全性があることを示さなければなりません。これはタンパク質の分子量の大きさや構造の複雑さなどが要因で、先行バイオ医薬品との同一性が示しにくいためです。この点が、バイオシミラーとジェネリック医薬品との大きな違いと言えるでしょう。

また、厚生労働省はジェネリック医薬品の数量シェアについて、2023年までに全国で80%以上を目指すとしています。一方、バイオシミラーの使用目標は検討状態が続いていることも相違点のひとつです。

バイオシミラーのメリット

ジェネリック医薬品と同様に、バイオシミラーも先行バイオ医薬品と同等の効き目や安全性が期待でき、かつ安価に利用できる点がメリットです。患者さまにとっては治療の費用負担が軽減され、薬剤師にとっては治療の選択肢を増やすことができます。

医療費の負担は社会的な課題の一つであり、バイオシミラーの活用が医療費の削減にも繋がります。ただし、先行バイオ医薬品が複数の効能や効果をもっていても、バイオシミラーもまったく同じ効能や効果をもっているわけではない点、薬剤の使用量や患者さまの年齢などによってはバイオシミラーで負担が軽減されないこともある点に注意してください。

変更調剤は可能?不可能?

一般的な医薬品は成分名が同じで薬剤料が同額以下である場合、先発薬(処方薬)と同一含量、同一剤形または異なる含量規格や類似する別剤形の後発薬で調剤可能です。

一方で、バイオシミラーの処方には医師が銘柄指定した処方箋が必要になります。たとえバイオシミラーの薬価が先行バイオ医薬品より低くても、薬剤師による変更調剤はできません。また、バイオシミラーからバイオシミラーへの変更も不可とされています。

医薬品の専門家として幅広い知識を身につけましょう

バイオ医薬品、そしてその後発薬であるバイオシミラーについて解説しました。一般的な薬剤に対するジェネリック医薬品と位置づけは類似していますが、製造販売に臨床研究が求められるほか、薬剤師による変更調剤が行えない点は知識として覚えておきましょう。

バイオ医薬品は一般的な医薬品と比べて認知度が低く、患者さまはもちろん医療従事者の理解が不足しているケースもあるかもしれません。しかし、これまで治療の困難だった疾患への効果が期待されており、今後ますますニーズが高まると予測されます。医薬品の専門家として、バイオ医薬品やバイオシミラーについて知識を身につけておくとよいでしょう。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/08/02

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