服薬指導に活かす医薬品情報

オゼンピック皮下注SD

Q

何のお薬?処方目的は?

A

食事療法、運動療法を行ったうえで効果が不十分だった『2型糖尿病』の治療に対して効能・効果を有します。

Q

用法・用量、製品特徴は?

A

通常、成人に開始する際は週1回0.25mgから開始し、4週間投与後週1回0.5mgに増量します。状態に応じて適宜増減しますが、4週間投与しても効果不十分のときは、週1回1.0mgまで増量可能です。このような用量漸増を行うのは胃腸障害の発現の軽減を期待しているためです。

1回使いきり製剤であるため、注射針の取り付けや空打ちが不要という製品特徴があります。投与を忘れた際は、次回投与まで2日(48hr)以上空いている場合は投与し、2日(48hr)未満の場合は次の投与曜日まで打たないよう指導します。

保管方法については『凍結』を避けて2~8℃で遮光保存し、使用直前に室温に戻すよう伝えます。

Q

作用機序は?

A

GLP-1(glucagon-like peptide-1:グルカゴン様ペプチド-1)はインクレチンの一種で、食事摂取により小腸下部から分泌され、膵臓からのインスリン分泌を促進するホルモンです。本剤は、膵β細胞膜上のGLP-1 受容体に結合し、グルコースの代謝により生じたATPからcAMPの産生を促進させることによって、グルコース濃度依存的にインスリンを分泌させます。

Q

注意すべき副作用は?

A

GLP-1受容体作動薬製剤が有する胃内容物排出抑制作用により、胃腸障害(便秘・下痢・胃の不快感等)が起こることがあります。投与開始3~4か月で発生し、通常は数日から数週間で改善します。

嘔吐を伴う激しい腹痛等が持続する場合は、重大な副作用である急性膵炎の可能性もあるため、直ちに投与を中止し受診します。また、単剤で投与する場合は低血糖症状を起こしにくい薬剤ですが、他の糖尿病用薬との併用時には低血糖症の発現に注意が必要です。特にSU剤やインスリン製剤との併用時に、低血糖が発現する可能性が高くなることがあるため注意します。

Q

他のGLP-1受容体作動薬製剤との違いは?

A

セマグルチドは構造が生体内GLP-1 と構造が類似したアナログ製剤で、生体内GLP-1と94%の相同性を有しています。セマグルチドはGLP-1に存在する一部のアミノ酸を修飾し、2つ存在するリジンの一つをアルギニンに置換することでDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)への安定性を向上させ、さらにクリアランスも低下させることで効果の持続性が高まり、週1回投与が可能となりました。週1回投与の製剤にはデュラグルチド(トルリシティ)もありますが、セマグルチドは体重減少効果、HbA1c低下効果共にデュラグルチドに比べ有意な差があります。しかしセマグルチドは用量調節を行う必要があります。

DPP-4 阻害薬とGLP-1 受容体作動薬
日本糖尿病学会が策定した『糖尿病治療ガイド2020-2021』において、「DPP-4 阻害薬とGLP-1受容体作動薬との併用は行わない」との記載があります。この理由は

① 2剤の併用によって血糖降下作用が増強され、低血糖症状がおこる恐れがある
② どちらもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有するという事実の他に
③ DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を併用した際の臨床試験成績がなく、有効性や安全性が確認されていないという理由が挙げられます。

上記2剤が併用された処方箋を受け取った際は薬学的観点からの判断だけでなく保険請求上のことも踏まえ、疑義照会を行う必要があります。

掲載日: 2022/10/06
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