リンヴォック錠

何のお薬？処方目的は？
用法・用量は？
作用機序は？
禁忌は？
併用注意は？
注意すべき副作用は？
使用上の注意は？

Q	何のお薬？処方目的は？
A	既存治療で効果不十分な『関節リウマチ』関節の構造的損傷の防止を含む、『関節症性乾癬』、『アトピー性皮膚炎』に適応を有します。

Q	用法・用量は？
A	『関節リウマチ』では成人に1日1回15mgを、状態に応じて7.5mgに減量して投与します。『関節症性乾癬』では成人に1日1回15mg、『アトピー性皮膚炎』でも成人には1日1回15mg、状態に応じて1日1回30mgに増量して投与します。12歳以上かつ体重30kg以上の小児患者には1日1回15mgを投与します。

作用機序は？

JAKファミリーのATP結合部位にリンヴォックが結合することで転写因子のシグナル伝達が阻害され、それぞれの病因にかかわるサイトカインの産生が抑制されます。他のJAK阻害薬と異なる特徴としては、可逆的かつ選択的にJAKファミリーを阻害し、特にJAK1を強く阻害することが分かっています。

JAK阻害薬と生物学的製剤（bDMARD) の違い

関節リウマチの治療には抗リウマチ薬（DMARD）が用いられますが、DMARDは合成抗リウマチ薬（aDMARD)と生物学的製剤（bDMARD）に大別されます。sDMARDは更に従来型（csDMARD）と分子標的型（tsDMARD）に分類ができます。JAK阻害薬はtsDMARDに属しており、『細胞内』から特異的な分子の働きを阻害することでサイトカインの産生を抑制します。一方、bDMARDは『細胞外』において炎症性サイトカインそのものを阻害するという違いがあります。

Q	禁忌は？
A	重篤な感染症の患者、活動性結核の患者、重度の肝機能障害の患者、好中球数（1,0 00/mmm3未満）やリンパ球数（500/mm3未満）が減少している患者、貧血 (Hb値が8g/dL未満の患者、過敏症の既往歴、妊婦又は妊娠の可能性のある女性には禁忌です。

併用注意は？

主にCYP3Aにて代謝されるため、CYP3Aを強く誘導する薬剤や強く阻害する薬剤は併用注意とされています。

乾癬について

皮膚の炎症症状を伴う慢性の病気です。他人にうつすことはありませんが、遺伝することがあります。症状によって5 つに大別されますが、最も多いのは全体の8割弱を占める『尋常性乾癬』です。皮膚が赤くなる『紅斑』、皮膚が盛り上がる『浸潤・肥厚』、銀白色のフケのような『鱗屑』、はげ落ちる『落屑』が特徴です。関節や背骨、アキレス腱や足の裏が腫れて痛む『乾癬性関節炎』は乾癬患者全体の15％程度合併し、関節リウマチと似たような症状を呈します。その他『滴状乾癬』、『乾癬性紅皮症』、『膿疱性乾癬』があります。

注意すべき副作用は？

リンヴォック錠には重大な副作用が設定されています。帯状疱疹や肺炎、結核は免疫を抑制することで引き起こされる感染症です。服用開始前にワクチン等の投与を検討する必要があります。重大な副作用も報告されていますので、投与中は次のような症状に注意しましょう。

疑われる副作用	自覚症状
重篤な感染症、好中球・リンパ球減少	発熱、咳、喉の痛み、悪寒等の症状
ヘモグロビン減少	息切れ、めまい等
消化管穿孔	激しい腹痛、腹痛持続等
肝機能障害	倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸等
静脈血栓塞栓症	胸の痛み、息切れ、ふくらはぎの痛み、熱感等
間質性肺炎	発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状

Q	使用上の注意は？
A	『帯状疱疹』発症予防にはワクチン投与が有効です。しかし生ワクチンである『乾燥弱毒性水痘ワクチン』を投与しないよう注意が必要です。また、徐放性を有する薬剤なので、『服用の際はかみ砕かないよう服用してください』という指導が必要となります。