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2020.05.22

漫画『アンサングシンデレラ』医療原案・富野浩充氏インタビュー<病院薬剤師の仕事>

漫画『アンサングシンデレラ』医療原案・富野浩充氏インタビュー<病院薬剤師の仕事>

「もしかして薬剤師っていらなくない?」

そんな衝撃的な主人公の疑問からはじまる漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』(月刊コミックゼノン/コアミックス)。本作では、総合病院で働く2年目の女性薬剤師が、さまざまな不安や問題を抱える患者さまを相手に奮闘する毎日を描きます。

これまで医療現場を題材にした漫画やドラマは多くありましたが、そのなかで薬剤師を主人公にした作品が描かれることはありませんでした。しかし、本作ではリアリティ溢れる数々のエピソードを通じて、薬剤師は患者さまにとっての「最後の砦」であるというメッセージを発信しています。

人気の秘訣となるリアルな薬剤師の日常を支える医療原案を担当するのが、焼津市立総合病院薬剤科の薬剤師としてご活躍されている【富野浩充先生】です。富野先生に、漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』(以下『アンサングシンデレラ』)の制作秘話や病院薬剤師の仕事、やりがいについて質問にお答えいただきました。

富野浩充(とみの ひろみつ)さん

東京理科大学薬学部卒業。薬剤師として薬局に勤務。その後、薬局勤務を続けながら、ウェブクリエイター、ライターなどとして活動。2004年より千葉県の総合病院薬剤部に勤務し、現在は関連病院に赴任。執筆活動も継続しながら、病院薬剤師として働いている。趣味は音楽ゲームとプロ野球観戦。

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「経験」を求めて病院薬剤師に。患者さまの不安を受け止めるのも薬剤師の仕事

富野先生は調剤薬局やドラッグストア、企業に勤めるなどさまざまな選択肢があるなかで、なぜ「病院薬剤師」になったのでしょうか。

はじめは調剤併設のドラッグストアで働いていて、街薬局にもいたことがあります。今は薬剤師として働く傍、ライターとしても活動していますが、実はずっと文章書きになりたかったんです。もともと一番必要なものは経験だと思っているので、どれも経験できたのはよかったと思っています。

「病院薬剤師」の仕事には、どのような大変さ・難しさがありますか?

病院薬剤師に限りませんが、自分の言葉が思わぬ形で患者さんにダメージを与えてしまうことがあり、難しいと感じます。逆に、患者さんから理不尽に怒りをぶつけられることもあるので、それは辛いです。でも街薬局時代の先輩に、「患者さんはただ言いたいだけなんだ。受け止めるのも薬剤師の仕事だ」と言われたことがあり、ずっと覚えています。

病院薬剤師の「実際」と「やりがい」

一般的に「病院薬剤師」には多忙な印象がありますが、実際にはいかがでしょうか?また、多忙でも頑張れる富野さまの"糧"を教えてください。

忙しさは病院によりまちまちです。規模や地域にもよりますが、自分の経験では都心の方が忙しかったです。

また、多くの病院や薬局は「週休二日制」で、祝日は考慮されません。とはいえ、研究室に所属していた学生時代が一番時間拘束も長く、辛かったですね。知らなかったことを知るのは面白いし、自分の提案した処方や中断によって患者さんが良くなるとホッとします。

「病院薬剤師」に向いている人は、どのような人だと思いますか?

特に気にしたことはありません。精神的なストレスは、保険薬局でも病院勤務でも同じですが、「対面業務」いわゆる接客業のスキルはある程度必要になります。

違いを述べるのなら、保険薬局であればレセプトをはじめ、ジェネリック同士の特徴推奨など、経営的な部分にもより気を使うようになります。ジェネリックは使用割合によって算定点数が変わってくるので、薬局はジェネリックの調剤割合をあげるために必死です。

とはいえ、単に安いものをメインに採用してよいのかというとそんな単純な話でもなく、「流通は安定しているか」「安定性など信頼しているか」「学術は頼りになるか」「問屋はどこが一番納入価を抑えてくれるか」などを考慮する必要があります。そのほかにも散剤と水剤ではジェネリック間で味の違いなどがわかりやすいため、患者さんによって好みがあるかもしれませんし、粒子径や調剤のしやすさもあります。細かいことをあげればきりがありませんが、薬局薬剤師はそうしたことも考えなければなりません。

また、ひとりの患者さんとの対面時間は病院薬剤師と比べて短いです。いろんな医師の処方に触れることができるので、多様な考え方を経験できるでしょう。

病院勤務では、組織が大きくなるほどレセプトや在庫管理に関わる人は限られてきます。保険薬局ではほぼ行わない注射調剤に携わることもあるでしょう。また、入院患者には自分のタイミングで訪問でき、時間もそれなりにかけることができます。ただし、院内の医師の処方にしか触れないので、やり方や考え方が偏ることも考えられます。

漫画『アンサングシンデレラ』好評につき、ドラマ化決定!薬剤師へのメッセージ

漫画『アンサングシンデレラ』のなかで、実際の経験をもとに漫画に活かしたエピソードがあれば教えてください。

第3話のCPA対応は実経験を元にして考えました。

薬剤師の漫画化やドラマ化を受けて、どのように思われましたか?

漫画化の打診があったときは、「薬剤師主役の物語が本当に成り立つのだろうか」と思いました。ドラマ化の報告を受けたときは、「既刊が少ないけど、早くない?」ですね(笑)。

ドラマは映像の見せ方という点で、漫画と違ってかなり盛られるんだろうなという不安もあります。予告ムービーをみて、やはり実際の現場と比べると「調剤室がやたら広いし、天井はどうなってるんだろう。これがテレビの見せ方なんだろうな」と思うこともありました。

『アンサングシンデレラ』を通して、どのようなことを伝えたいですか?

臨床の薬剤師がどんな仕事をしているか、一般への周知につながればいいなと思います。

富野先生の思う「薬剤師」という仕事の魅力はなんでしょうか?

「化学系ならどこにでも顔を出せるフィールドの広さ」です。

医療現場で活躍される現役薬剤師の方へ、メッセージをお願いします。

「薬剤師って、いらなくない?」と思われないために、お互い頑張りましょう。

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まとめ

AIなどテクノロジーの普及が進むなかで、「薬剤師っていらなくない?」そんな風に薬剤師の存在意義に疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし、薬剤師はただ薬を出すだけの存在ではなく、薬のプロフェッショナルとして、医療の最後の砦として患者さまの望む医療方針へと導く重要な役割があります。

漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』では、そんな志高い薬剤師たちが奮闘する今の医療現場がリアルに再現されています。一般の方へ"本来の薬剤師の役割を知ってもらう"とともに、薬剤師である当人たちが胸を張って「薬剤師は必要な存在だ」と言えるように。それから新しく薬剤師を志す人たちのきっかけとなるよう、本作品がさまざまな人の手に広がっていってほしいと思います。

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記事掲載日: 2020/05/22

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