服薬指導に活かす医薬品情報

イクスタンジ錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

去勢抵抗性前立腺癌」を適応症とします。

Q

用法・用量・薬物動態は?

A

通常、160mgを1日1回経口投与します。活性代謝物の薬物動態は空腹時・食後で同程度です。半減期は4.7~8.4日と長く、約4週間で定常状態に達するとされています。
肝代謝型薬剤で、主にCYP2C8により代謝されます。またCYP3A4、CYP2C9、CYP2C19の誘導作用を持つため、これらで代謝されるワルファリンやオメプラゾールとの併用時には効果を減弱させる恐れがあります。

Q

作用機序は?

A

アンドロゲン受容体へのアンドロゲン結合を競合阻害するだけでなく、アンドロゲン受容体の核内移行と転写因子への結合阻害作用も持ち、複数の段階でシグナル伝達を阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。

Q

注意すべき副作用は?

A

疲労感、嘔気、食欲不振の頻度が高く、稀に痙攣、血小板減少を認めます。治療開始後4週間以内の発現例が多く、投与開始後2~4週間は血液検査を含めた慎重な経過観察が必要とされます。

Q

他の前立腺癌治療薬(内服)との違いは?

A

○ビカルタミド・フルタミド
「前立腺癌」の適応を持つアンドロゲン受容体阻害薬ですが、去勢抵抗性前立腺癌ではアンドロゲン受容体の発現が亢進しており、この条件下ではアゴニストとして作用して腫瘍増殖を促進するという報告があるため、薬剤の変更が必須です。また、これらの薬剤では劇症肝炎などの重篤な肝機能障害に注意が必要です。本剤ではアゴニスト作用は認められておらず、現状では肝炎の報告もありません。

○アビラテロン(ザイティガ)
本剤と同じく「去勢抵抗性前立腺癌」の適応を持ちますが、薬理作用が異なり、アンドロゲン合成酵素のCYP17を阻害し、抗腫瘍効果を示します。同時にステロイドホルモンの合成も阻害されてしまうため、主に補充目的でプレドニゾロンの併用が必要となります。

●総評として、劇症肝炎などの肝機能障害リスクが減り、去勢抵抗性となった前立腺癌治療に有用な薬剤です。但し適応は去勢抵抗性に限定される点、従来の治療薬より高価である点、CYP誘導作用による相互作用がある点には注意が必要です。

掲載日: 2021/06/17
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります