服薬指導に活かす医薬品情報

デエビゴ錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

不眠症」の効能・効果を有します。

Q

用法・用量・薬物動態は?

A

通常、1日1回5mgを就寝直前に投与し、症状により適宜増減しますが、1日1回10mgを超えないこととされています。食後投与では吸収の遅延と血漿中濃度低下が認められるため、食事と同時または食直後の服用は避けることとされています。
代謝には主にCYP3Aが関与しているため、中等度の肝機能障害がある場合は1日1回5mgを超えないこと重度の肝機能障害がある場合は禁忌とされています。また、重度の腎機能障害がある場合は慎重投与とされています。
相互作用の面ではCYP3Aを阻害する薬剤とは併用に注意が必要で、クラリスロマイシンなどCYP3Aを中程度・強力に阻害する薬剤との併用では1日1回2.5mgにすることとされており、状態の慎重な観察と投与可否判断が必要です。
他の不眠症治療薬との併用における有効性・安全性は確立されていません。

Q

作用機序は?

A

本剤は睡眠・覚醒の調節因子であるオレキシン受容体を遮断し、覚醒を抑制することで正常な睡眠を促します。オレキシン受容体は2種類のサブタイプが知られており(OX1R・OX2R)、OX2Rの方が覚醒/睡眠の調節により重要な役割を担っていると示唆されています。

Q

注意すべき副作用は?

A

傾眠、頭痛、倦怠感が主な副作用として報告されています。また、本剤の影響が服用の翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意することとされています。

Q

スボレキサント(ベルソムラ)との違いは?

A

成分名称は似通っていますが、本剤はスボレキサントの改良を目的に開発された薬剤ではなく、有効成分の構造骨格は全く別物です。
薬効の面ではどちらもオレキシン受容体を阻害することで自然な眠りに近い効果を発揮しますが、本剤はスボレキサントよりも阻害作用が強く、またOX1RよりもOX2Rの阻害作用が強いです。
用法・用量の面では、本剤は年齢による減量規定はありませんが、スボレキサントは高齢者では15mgまでとする制限があります。また、本剤はCYP3Aを強く阻害する薬との併用も減量すれば可能ですが、スボレキサントは併用禁忌です。
製剤の安定性の面では、本剤は無包装状態でも安定であり分包可能ですが、スボレキサントは高湿度条件下で1日後からコーティング層の外観変化が認められ溶出速度が低下するため、分包は避けた方が望ましいと考えられます。

Q

スボレキサント以外の睡眠薬との違いは?

A

従来用いられている睡眠薬のベンゾジアゼピン系薬剤やZ薬はGABA受容体に作用して効果を発揮し、覚醒の強さに関わらず睡眠を促すという点で、覚醒を抑制し自然な睡眠を促す本剤やスボレキサントとは作用が異なります。これらの薬剤では反跳性不眠や依存性、筋弛緩作用などが問題になるものもありますが、本剤やスボレキサントは臨床試験の結果から反跳性不眠や依存性、筋弛緩作用は起こらないものと考えられています。
本剤は総睡眠時間を増加させるものの、レム睡眠の時間も増加します。スボレキサントも同様です。他方でベンゾジアゼピン系睡眠薬やZ薬はレム睡眠を増加させることはありません。レム睡眠中に夢を見るといわれているため、本剤やスボレキサントではベンゾジアゼピン系睡眠薬やZ薬と比較して夢見が増える可能性があります。

Z薬(Z-Drugs)
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はベンゾジアゼピン骨格を有しませんが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に類似した作用を有しています。ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン(国内未発売)などが該当し、どれもZで始まるため、Z薬と呼ばれています。筋弛緩作用が少なく、ふらつき・転倒リスクが低いとされています。


◆総評として、スボレキサントよりもオレキシン受容体阻害作用が強く、より強い睡眠効果が期待できる薬剤です。しかしCYP3Aを中程度~強力に阻害する薬剤との併用には注意が必要です。



掲載日: 2022/05/26
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