服薬指導に活かす医薬品情報

フィアスプ注

Q

何のお薬?処方目的は?

A

 「インスリン療法が適応となる糖尿病」に適応を有します。

Q

用法・用量・薬物動態は?

A

通常、成人では、初期は1回2~20単位を毎食事開始時に皮下投与しますが、必要な場合は食事開始後の投与とすることも可能です。投与量は、患者の症状及び検査所見に応じて適宜増減しますが、持続型インスリン製剤の投与量を含めた維持量は通常1日4~100単位です。
従来の「食直前」ではなく「食事開始時」という用法については、食事開始前の2分以内とされています(※食直前は食事開始前の約15分以内)。また、食事開始後についても、食事開始から20分以内と細かく規定されています。
既存の超速効型インスリン製剤(ノボラピッド注)による治療よりも、さらに生理的な食事時のインスリン分泌パターンに近づくように開発されました。有効成分はノボラピッド注と同じインスリンアスパルト(遺伝子組み換え)ですが、本剤には添加剤としてニコチン酸アミドが配合されており、吸収速度の向上に寄与しています。その結果、食事開始後の投与を可能としたインスリン製剤です。
薬剤名称は「Faster insulin aspart」、ノボラピッド注より作用発現が早いことに由来します。

Q

ノボラピッド注との違いは?

A

前述の通り、ノボラピッド注とは有効成分は同じインスリンアスパルト(遺伝子組み換え)であり、添加剤だけが異なります(一般名も同じ)。本剤はノボラピッド注と比較して、投与後に血糖値がベースラインより5 mg/dl以上低下するまでの時間は約5分早く、血中濃度が定量下限値に達する時間はおよそ半分と、薬効の発現と体内からの消失がどちらも早くなっていることが特徴です。

Q

ルムジェブ注との違いは?

A

ルムジェブ注は本剤と同様、超速効型であるインスリンリスプロ(ヒューマログ注)の添加剤の組成を変更し、トレプロスチニルとクエン酸を添加することで吸収速度を向上させた製剤です。本剤同様、食事開始後の投与も可能です。
本剤と比較すると、ルムジェブ注の方がインスリンの血中濃度の立ち上がりが早く、消失も早いとする論文がありますが、添付文書における用法はどちらも食事開始前2分以内、必要な場合は食事開始から20分以内とされており、同じです。

「必要な場合は」食事開始後の投与 の理由
本剤の第三相試験における食前投与群と食後投与群について、どちらもノボラピッド注の食前投与群との比較ではHbA1c変化量の非劣性が示され、低血糖の発現状況も臨床的に問題となる差は認められませんでした。
しかし、HbA1c変化量について、本剤の食前投与群と食後投与群を比較すると、食前投与群のほうが食後投与群より良好な結果でした。その点を踏まえ、「通常は食事開始時の投与」とし、「必要な場合は食事開始後の投与とすることもできる」と用法が設定されています。

◆総評として、ノボラピッド注よりも効果発現・体内からの消失がともに早くなり、食事開始後に使用することも可能になった薬剤ですが、食事開始時という新しい用法は従来の食直前とは異なるため、切り替え時には注意が必要な薬剤です。

掲載日: 2022/06/09
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