肺MAC症の中心的役割を担う薬剤はどれでしょうか?

Q

肺MAC症の中心的役割を担う薬剤はどれでしょうか?

    肺MAC症の中心的役割を担う薬剤はマクロライド系抗菌薬で、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシンが使われています。

    肺MAC症とは、非結核性抗酸菌の一種であるMycobacterium avium complex(MAC:マック)菌による呼吸器感染症です。

    MAC菌は水や土壌など自然環境に広く存在する菌で、人から人に感染することはありません。症状として、咳、痰、血痰、倦怠感などがあります。

    患者さまの病態により治療方法は異なりますが、以下のような処方がよくあります。

    ・クラリスロマイシン錠200mg
    (1日2回 1回2錠)

    または

    ・アジスロマイシン錠250mg
    (1日1回 1回1錠)

    ・エタンブトール塩酸塩錠125mg/250mg
    (1日1~2回 1日10〜15mg/kg、最大750㎎まで)

    ・リファンピシンカプセル150mg
    (1日1回 1回10mg/kg、1日最大600㎎まで)

    リファンピシンは、原則として朝食前投与ですが、食後でも血中濃度の低下は許容できる範囲なので、飲み忘れ防止などの観点から食後で処方されることがあります。

    抗結核薬であるエタンブトールやリファンピシンが処方されているので、結核と勘違いする方がいますが、肺MAC症と結核は異なる疾患なので注意してください。

    結核の場合、クラリスロマイシンは使用せず、イソニアジドやピラジナミドを使用します。この処方のポイントとして、エタンブトールによる視力障害の副作用に注意してください。

    早期に発見して薬剤を中止すれば可逆性ですが、発見が手遅れになると不可逆性になる恐れがあります。

    副作用のため中止せざるを得ない場合、エタンブトールの代替としてレボフロキサシンまたはシタフロキサシンが適応外で処方されることがあります。

    リファンピシンは赤い色素を含有しているため、尿や便、汗などが赤くなることがあります。患者さまがびっくりして服薬を中断しないために、体への害ではなく薬の色素が出ているだけなので問題ないことを伝えてください。

    また、CYP2C19やCYP3Aの強い誘導薬なので、併用禁忌や併用注意に気を付ける必要があります。

    処方監査・服薬指導のPOINT

    肺MAC症の治療は、菌が陰性化してから12ヵ月間は薬を継続する必要があります。

    そのため薬物治療は長期に及ぶため、飲み忘れや重大な副作用が起きていないかしっかり確認してください。

    特に、エタンブトールによる視力障害は、毎回必ず確認しましょう。

    濱本 幸広(はまもと・ゆきひろ)さん
    京都薬科大学卒、薬剤師。
    調剤併設ドラッグストア、調剤薬局、派遣薬剤師など、数多くの経験をしながら処方鑑査の腕を磨く。
    2022年10月、4分類法を活用した処方鑑査の指南書『達人の処方鑑査術』を出版、好評発売中。
    ▼運営サイト
    https://kusuri-shidousen.com
    掲載日: 2025/04/24
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

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