心不全の薬物治療「ファンタスティック4」に含まれない薬はどれでしょうか?

Q

心不全の薬物治療「ファンタスティック4」に含まれない薬はどれでしょうか?

    左室駆出率が低下した心不全、HFrEFに基本薬としてARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬の4剤を組み合わせて使うことを「ファンタスティック4」と呼びます。

    ACE(エナラプリルなど)やARBは心不全の治療に使われますが、ファンタスティック4ではありません。

    臨床試験により、ARNIはエナラプリルを上回る生命予後改善効果が明らかになったので、ACE/ARBによる治療でも症状があるHFrEFの患者さまではARNIへの変更が推奨されています。

    それぞれの薬効分類で心不全に適応がある薬は下記のとおりです。

    ARNI
    エンレスト(サクビトリルバルサルタンナトリウム)

    β遮断薬
    カルベジロール、ビソプロロール

    MRA
    スピロノラクトン、エプレレノン

    SGLT2阻害薬
    フォシーガ(ダパグリフロジンプロピレングリコール)、ジャディアンス

    HFrEFの治療は、ファンタスティック4を低血圧や徐脈などに注意しながら最大量または最大耐用量で使うことが重要です。

    ただし、現時点では、ACE阻害薬・ARBからの切り替えではないARNIの導入は保険適用として認められていません。

    ACEからARNIに変更する場合、血管浮腫の副作用が出る恐れがあるので、ACEの服用を中止してから36時間以上空けてARNIを開始する必要があります。ARBからARNIに変更する時は、このような制限はありません。

    処方監査・服薬指導のPOINT

    HFrEFを治療中の患者さまの処方鑑査では、特に理由がない限り、ファンタスティック4が解除されないように注意が必要です。

    また、ARNIが初回から処方されている場合は、疑義照会が必要となります。

    ACEからARNIに変更された場合は、患者さまにACEの休薬期間について確認しましょう。

    濱本 幸広(はまもと・ゆきひろ)さん
    京都薬科大学卒、薬剤師。
    調剤併設ドラッグストア、調剤薬局、派遣薬剤師など、数多くの経験をしながら処方鑑査の腕を磨く。
    2022年10月、4分類法を活用した処方鑑査の指南書『達人の処方鑑査術』を出版、好評発売中。
    ▼運営サイト
    https://kusuri-shidousen.com
    掲載日: 2025/05/12
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

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