心不全の患者さまにおいて、投与開始後に一時的にBNP値が上昇しうる薬はどれでしょうか?

Q

心不全の患者さまにおいて、投与開始後に一時的にBNP値が上昇しうる薬はどれでしょうか?

    エンレスト(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬:ARNI)は、ネプリライシン(NEP)阻害作用を有するサクビトリルと、AT1受容体拮抗作用を有するバルサルタンを配合した薬です。

    BNP(Brain Natriuretic Peptide:脳性ナトリウム利尿ペプチド)は、ネプリライシンによって分解されますが、サクビトリルはネプリライシンの作用を阻害するため、BNPの分解が抑えられます。

    その結果、エンレスト投与開始後8〜10週目ぐらいまでは、心不全が悪化していなくてもBNP値が一時的に上昇することがあります。

    一方、NT-proBNP値はエンレストの影響を受けずに心臓の状態を反映するため、投与開始後の評価指標としてより適しています。

    (※実臨床ではエンレスト開始前後の検査をBNP値で経過観察している施設もあるため、息切れ、浮腫、易疲労感、腹部膨満感などの臨床所見もあわせて総合的に評価する視点が大切です。)

    参考として、以下の基準がありますが、単回の数値だけでなく、過去の数値との推移を確認することが重要です。

    前心不全〜心不全の可能性がある


    ・35pg/mL ≦ BNP値< 100pg/mL

    ・125pg/mL ≦ NT-proBNP値 < 300pg/mL

    心不全の可能性が高い


    ・100pg/mL ≦ BNP値 < 200pg/mL

    ・300pg/mL ≦ NT-proBNP値 < 900pg/mL

    高リスク心不全の可能性が高い


    ・200pg/mL ≦ BNP値

    ・900pg/mL ≦ NT-proBNP値

    処方監査・服薬指導のPOINT

    心不全の患者さまが検査値を持参している場合は、BNP値またはNT-proBNP値の数値を確認して薬歴に記載しておきます。 (※併せて、体重、血圧、腎機能、カリウム値なども確認しておくとよいでしょう。)

    エンレスト投与開始後は、BNP値が一時的に上がることがあるので、検査値の見方には注意が必要です。

    濱本 幸広(はまもと・ゆきひろ)さん
    京都薬科大学卒、薬剤師。
    調剤併設ドラッグストア、調剤薬局、派遣薬剤師など、数多くの経験をしながら処方鑑査の腕を磨く。
    2022年10月、4分類法を活用した処方鑑査の指南書『達人の処方鑑査術』を出版、好評発売中。
    ▼運営サイト
    https://kusuri-shidousen.com
    掲載日: 2026/08/19
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

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