服薬指導に活かす医薬品情報

エフィエント錠

Q

何のお薬?用法・用量は?

A

本剤はチエノピリジン構造を有するプロドラッグであり、生体内で活性代謝物に変換された後、血小板膜上のADP 受容体(P2Y12)を選択的かつ非可逆的に阻害することで血小板凝集を抑制します。適応症は「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST 上昇心筋梗塞)、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞」で、アスピリンと併用します。


「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」では、PCI 施行後の再梗塞予防には抗血小板療法が推奨されており、特に薬剤溶出性ステント後には2 剤の抗血小板薬による治療も行われます。

Q

同種同効薬との違いは?

A

同じ構造を有するプロドラッグとしてクロピドグレル(プラビックス)がありますが、活性代謝物への代謝過程が異なります。クロピドグレルは薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)で2回代謝されて活性代謝物が生成しますが、遺伝子多型が存在するCYP2C19の寄与が大きく、CYP2C19活性が著しく低下しているpoor metabolizerが約15~20%に存在するとされている日本人では、十分な効果が得られない場合もあります。


一方、本剤は小腸細胞でヒトカルボキシルエステラーゼにより速やかに代謝され、更にCYPで代謝され活性代謝物が生成しますが、複数のCYP分子種が関与し(主にCYP3A及びCYP2B6と考えられている)、CYP2C19の寄与が少ないため、血小板凝集抑制作用に個体差が生じにくいというメリットがあります。またエステラーゼはCYPより代謝スピードが速いため、本剤の方が活性代謝物の産生効率が高く、効果発現が早いとされています。

Q

注意すべき副作用は?

A

主な副作用は皮下出血、鼻出血、血尿等です。稀に頭蓋内出血(初期症状:頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺)や消化管出血(初期症状:吐血、下血、血便、腹痛、腹膨満感)等の重篤な出血の恐れもあるため、初期症状に注意しながら服用するよう指導しましょう。

Q

相互作用は?

A

NSAIDsとの併用で相互に抗血栓作用を増強する恐れがあるため、出血傾向に注意しながら使用する必要があります。

Q

手術時の休薬の必要性

A

薬剤溶出性ステント留置後6 ヶ月以内にチエノピリジン系薬剤を休薬した場合のステント血栓症は休薬後13.5 日(中央値)で発生していたとの報告もあるようです。「非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン」では、やむなく外科的治療が必要となりチエノピリジン系薬剤を中止しなくてはならない場合にも、可能ならばアスピリンは継続すべきであること、やむなく抗血小板薬をすべて中止せざるを得ない場合にはヘパリン投与を開始することが望ましいとされています。

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派遣薬剤師のススメP
掲載日: 2020/06/25
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