服薬指導に活かす医薬品情報

アポハイドローション20%(一般名:オキシブチニン塩酸塩)

ここがポイント!

  • 塗布後は、⽬や⼝に触れないこと(⻭磨きやコンタクトレンズの扱いのあとに塗布すること)
  • 使⽤期間中のフォローアップでは、塗布部位の炎症やかゆみ、湿疹などの⽪膚の異常がないか、⼝の渇き、便秘やお腹の張り、尿がでにくい、などの症状がないかを確認する
  • Q

    【何のお薬?処方目的は?】

    A

    適応症は「原発性手掌多汗症」です。この疾患に保険適用のある国内初の外用薬です。本剤はエクリン汗腺に存在するムスカリンM3受容体に結合して抗コリン作用を示すことにより、発汗抑制作用を発現すると考えられています。2024年6月1日から長期投与が可能となりました。ちなみにオキシブチニンは経口薬(ポラキス)、貼付剤(ネオキシテープ)が神経因性膀胱・過活動膀胱の治療薬として発売されています。エクロックゲルとラピフォートワイプの適応症は「原発性腋窩多汗症」です。適応部位が異なるので注意しましょう。


    ■原発性局所多汗症の診断基準

    局所的に過剰な発汗が6ヵ⽉以上認められ、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合、原発性局所多汗症と診断される(基礎疾患のある続発性を除く)

    ① 最初に症状が出たのが25歳以下
    ② 左右対称性に発汗がみられる
    ③ 睡眠中は発汗が止まっている
    ④ 1週間に1回以上多汗の症状がみられる
    ⑤ 家族歴がみられる
    ⑥ それらによって日常生活に支障をきたしている

    Q

    【用法・用量は?使用上の注意点は?】

    A

    1日1回、就寝前に両手掌全体に塗布します。1回量の目安はポンプ5押し分(500㎍)です。塗布後は意図せず洗い流されないようにするため、就寝前に塗布します。翌朝、起床時に流水で手を洗います(その後の塗布はしません)。塗布後は目や口に触れないようにします。歯磨きやコンタクトレンズの扱いは、塗布の前に終わらせるよう指導します。本剤は密閉すると吸収量が増加する可能性があるため、塗布後、手袋等で覆わないようにします。添加物としてエタノールが含まれているため火気に注意します。

    Q

    【投与禁忌の疾患は?主な副作用は?】

    A

    抗コリン作用により症状が悪化する恐れがあるため、閉塞隅角緑内障の患者、下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症など)による排尿障害のある患者、腸閉塞または麻痺性イレウスのある患者、重症筋無力症の患者が禁忌となっています。RMPにおける「重篤な特定されたリスク」として、抗コリン作用に基づく副作用(霧視、尿閉、麻痺性イレウス等)、「重要な潜在的リスク」に血小板減少があります。第Ⅲ相試験における主な副作用は口喝(3.5%:5/144例)、皮膚炎やそう痒感など塗布部位の有害事象(9%:13/144例)であり軽度のものが多いという結果です。抗コリン作用による全身性の副作用としては、口喝、便秘、腹部膨満感、尿が出にくい、散瞳(まぶしさやピントが合わない)などがあります。また発汗抑制作用があることから、夏場の激しい運動を避け、体温上昇の可能性(熱中症)に注意します。なお抗コリン作用による副作用発現例数の75%が12週までに発現しています。


    原発性局所多汗症とは

    頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に温熱や精神的負荷、またはそれによらず大量の発汗が起こり、日常生活に支障をきたす状態と定義されている。手掌部に発現する原発性手掌多汗症は、本邦における有病率は5.33%(約493万人)、平均発症年齢は13.8歳、幼少児期又は思春期頃に発症することが多い。手掌多汗症では、「紙が汗で滲んでしまいペーパーワークに支障をきたす」「パソコン・スマホなどの電子機器類が操作できない」「スポーツや楽器の演奏が制限される」「握手ができない」など、学習効率や労働生産性の低下、精神的苦痛、対人関係への悪影響に苛まれ、患者の生活の質(QOL)の低下をきたすとされている。

    ※原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版

    (2024年4月24日時点)

    掲載日: 2025/02/20
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

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