認知症のBPSDに適応外処方として使用されることがある薬はどれでしょうか?

Q

認知症のBPSDに適応外処方として使用されることがある薬はどれでしょうか?

    周辺症状(BPSD)とは、認知症に伴ってあらわれる興奮、不安、うつ、不眠、幻覚などの行動・心理症状のことです。

    これらの症状が現れると、患者さま本人だけでなく、家族や介護者の負担が増大します。

    そのため、薬物療法を含めた適切な治療介入を検討する必要があります。

    クエチアピンは、本来、統合失調症の治療薬として承認されていますが、興奮や易怒性を伴うBPSDに対しても、適応外で使用されることがあります。

    注意点として、過鎮静や転倒のリスクがあるので、12.5~25mg程度の低用量から開始して、副作用に注意しながら慎重に増量します。

    他の抗精神病薬(リスペリドンなど)、一部の抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウムなど)、漢方薬の抑肝散もBPSDに対して適応外で処方されることがあります。

    また、レキサルティは「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性」に適応があります。

    認知症の方が不眠や不安などの症状を訴える場合、ベンゾジアゼピン系睡眠薬や抗不安薬は、せん妄のリスクを高める恐れがあるため、一般的には使用されません。

    代わりに、オレキシン受容体拮抗薬がよく処方されています。また、適応外ではありますが、トラゾドンが処方されることもあります。

    処方監査・服薬指導のPOINT

    クエチアピンが認知症の患者さまに処方されている場合、行動・心理症状(BPSD)治療目的で適応外処方の可能性があります。

    通常、クエチアピンは低用量から開始します。

    初回から25mgを超える用量で処方された場合、用量が適切かどうか、処方医に確認しましょう。

    また、クエチアピンは過鎮静や転倒のリスクを高めます。

    BPSDの症状が緩和されたとしても、副作用(ぼーっとした状態が続くなど)の兆候が見られた場合は、医師または薬剤師に伝えるよう、家族や介護者に指導しておきましょう。

    濱本 幸広(はまもと・ゆきひろ)さん
    京都薬科大学卒、薬剤師。
    調剤併設ドラッグストア、調剤薬局、派遣薬剤師など、数多くの経験をしながら処方鑑査の腕を磨く。
    2022年10月、4分類法を活用した処方鑑査の指南書『達人の処方鑑査術』を出版、好評発売中。
    ▼運営サイト
    https://kusuri-shidousen.com
    掲載日: 2025/05/29
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

    あわせて読まれている記事

    \登録無料!簡単約1分/

    ファルマラボ会員特典

    1. 薬剤師の業務に役立つ資料や動画が見放題!
    2. 会員限定セミナーへの参加
    3. 資料・セミナー・コラムなど最新リリース情報をお知らせ