ワーファリンを服用中の患者さまに投与する場合、PT-INR上昇にもっとも注意すべき抗菌薬はどれでしょうか?

Q

ワーファリンを服用中の患者さまに投与する場合、PT-INR上昇にもっとも注意すべき抗菌薬はどれでしょうか?

    ST合剤(バクタ)は、薬理活性の高いS-ワルファリンの肝臓での代謝を阻害し、数日以内にPT-INRを上昇させる可能性があります。

    エーザイ株式会社が公開している「Warfarin適正使用情報 改訂版 相互作用各論編」によると、この相互作用は発生頻度が高いため、併用は避けた方がよく、やむを得ず併用する場合は、PT-INR変動に十分注意するよう記載されています。

    高齢者や併用薬の多い患者さまでは、出血(脳出血、消化管出血など)に至る可能性があるため、代替抗菌薬への変更が必要になることがあります。

    やむを得ず併用する場合は、ST合剤の使用は必要最低限の日数にとどめ、開始時から計画的にワーファリンを減量し、定期的な採血を行うことが推奨されます。また、ST合剤は高カリウム血症のリスクも高まるため、ACE阻害薬、ARB、MRAを併用している場合には血清カリウム値の変動にも注意が必要です。

    ワーファリンとの相互作用について注意喚起されている他の抗菌薬として、マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、アジスロマイシン)があります。これらの薬は疾患によっては長期連用されることがあるので、PT-INRの変動には十分に気を付ける必要があります。

    処方監査・服薬指導のPOINT

    ワーファリンは併用注意が必要な薬が非常に多く、問題の有無の判断に迷う事例も少なくありません。

    PT-INRの変動に影響を与えやすいST合剤やマクロライド系抗菌薬が処方された場合、ワーファリンの用量調整や代替抗菌薬の検討が必要になることがあります。

    必要に応じて処方医へ情報提供を行いましょう。

    濱本 幸広(はまもと・ゆきひろ)さん
    京都薬科大学卒、薬剤師。
    調剤併設ドラッグストア、調剤薬局、派遣薬剤師など、数多くの経験をしながら処方鑑査の腕を磨く。
    2022年10月、4分類法を活用した処方鑑査の指南書『達人の処方鑑査術』を出版、好評発売中。
    ▼運営サイト
    https://kusuri-shidousen.com
    掲載日: 2025/09/11
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

    あわせて読まれている記事

    \登録無料!簡単約1分/

    ファルマラボ会員特典

    1. 薬剤師の業務に役立つ資料や動画が見放題!
    2. 会員限定セミナーへの参加
    3. 資料・セミナー・コラムなど最新リリース情報をお知らせ